本研究は、2019年度終了予定であったが、新型コロナウイルス感染症で延期された学会参加の費用のみを繰りこし、執行する予定で研究期間の延長を行った。 大都市部での事例調査を行ってきた大阪市については、協議会型地域組織の導入過程に焦点を当て、自治体改革とコミュニティ施策との関係について事例研究を行った。本研究ではこれまで、近年の地域自治推進政策が自由度の拡充よりも地域内の協働による活動量の増加を志向していることを示してきたが、ここに各自治体での改革動向が加味されることを明らかにした。コミュニティ施策は、財政規模や「費用拡散・便益集中」型の性質を持ち、政策領域としてはマイナーなものであるが、自治体改革の一環として首長リーダーシップのもとに推進され、制度形成がなされていくことを示した。2018年度に行った本研究の調査(伊賀市の公共施設の再編過程における協議会型地域組織の関与)も含め、包括的な自治体改革が地域自治推進政策の制度形成、制度運用への影響を確認した。 中山間地の事例として調査を行ってきた益田市については、「中間支援」の取り組みに焦点を当てて検討し、学会報告を行った。地域自治推進政策が地域内の協働による活動量の増加を志向しているとしても、人材不足や事業見直しに取り組むためにはソフトの支援が必要となる。調査を行った益田市では、UIターン人材を核に、新たに「中間支援組織」設立を実現した。「中間支援」は、コプロダクション論でのco-production(地域内の共同サービス生産)と、co-management(地域と自治体行政との間の調整)の両方にまたがる領域であるが、益田市の事例は、行政の担当相員や集落支援員の活用など、従来から手厚く行ってきたco-managementを維持しつつ、co-production支援の多様化を図る、いわば「中間支援の重層化」の推進ととらえられる。
|