明治前期の思想界をリードした明六社に注目し、その政治思想史的意義を解明した。とりわけ、明六社が何を目指して結成されたのかについての調査と検討を行ってきたが、その結果、従来言われてきたような演説の結社であるという特徴以上に、明六社は討論する結社であろうとする所にこそ、著しい特徴があったという理解に至った。彼等にとって、演説は討論を成り立たせるための手段であり、より重要なのは討論だったのである。彼等は討論の意義を強く感じると共に、その難しさをも同時に認識していた。だからこそ、有意義な討論が成立するための条件を模索し続けていた。本研究では、その軌跡を明らかにした。
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