研究課題/領域番号 |
17K03564
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坪郷 實 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 名誉教授 (20118061)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リアル市民社会 / デモクラシー / ヘイトスピーチ・ヘイトクライム規制 / 県民投票 / 辺野古米軍新基地 / 自治体議会改革 |
研究実績の概要 |
(1)リアル市民社会についてのドイツの事例に関して、引き続き資料収集を進めるとともに、「ドイツにおけるヘイトスピーチ・ヘイトクライム規制とデモクラシーの活性化」を執筆し、西ドイツにおいて民衆扇動罪が創設、拡大され、統一ドイツでも改訂が進められていること、2015年以降の難民政策をめぐっては、連邦政府と自治体政府の取り組みと共に、市民社会からの取り組みが重要であることを分析した。 (2)リアル市民社会の日本の事例については、安保法制をめぐる新たな社会運動の事例について資料収集を行った。リアル市民社会の市民的側面については、街頭デモや官邸前集会・国会前集会などの社会運動の流れと、政策提案・政策実現型市民活動、社会的自助グループなどの流れがある。 (3)日本における市民社会と政府・自治体政府との関係性に関しては、2018年後半に実施が決まった「辺野古米軍新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票」の事例について調査を行った。2月14~15日の事前調査では、辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議、自治労沖縄県本部などの県民投票運動に関する取り組み、大浦湾の自然環境保全活動などを調査した。3月28~30日の本調査では、仲地博氏(沖縄大学学長)、比嘉勝太氏(オール沖縄会議前事務局長代行)、徳田博人氏(琉球大学)、田島利夫氏(前読谷村副町長)、名和純氏(貝と言葉のミュージアム)にヒアリングを行った。県民投票の会の青年が先導して署名活動を行い、途中から多様なメンバーが参加して成功させたこと、県民投票が国民の意識を変えたこと、沖縄自治州構想が継承されているが市民に浸透していないことなどの点を把握した。 (4)日本における自治体改革と市民活動促進政策に関しては、埼玉県所沢市議会、東京都多摩市議会においてヒアリングを行い、市民参加を梃子にして議会改革が進展していることを把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ドイツのリアル市民社会の事例研究に関しては、ヘイトスピーチ・ヘイトクライム規制の経緯を整理し、特に難民政策をめぐる政府・自治体と市民社会のそれぞれの取り組み、両者の関係性について分析した論文を執筆した。 (2)ドイツのデモクラシーの動向については、ベルリン自由大学客員教授マイク・ヘンドリク・シュプロッテ氏を迎えて、市民社会研究会を実施し、最新の動向を把握できた。 (3)日本のリアル市民社会の事例研究に関しては、新たに「辺野古米軍新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の事例」を取り上げた。2月24日に実施された県民投票前の事前調査(研究協力者伊藤久雄氏、小林幸治氏により実施)と、県民投票後の3月末の本調査(研究代表者坪郷實、研究協力者小林幸治氏、林和孝氏により実施)を短期間に行うことができた。 (4)「脱原発依存とエネルギー政策の転換の事例」については、市民電力連絡会の講演会に出席し、東京都の市民電力の最新データを入手することができた。さらにヒアリング調査を行うための準備を行うことができた。 このように、ドイツと日本の事例研究に関する資料収集とヒアリング調査を進めており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今年度は、研究協力者の小林幸治氏、伊藤久雄氏、林和孝氏、宮崎徹氏、三浦一浩氏の参加で、市民社会研究会を開催し、沖縄県民投票事前調査報告会と、ドイツのデモクラシーの最新動向についての報告を受け、議論を行った。これに続いて、次年度は、沖縄本調査を踏まえて報告会を開催し、さらに、追加的に専門家のヒアリングを予定している。 (2)「ヘイトスピーチをめぐる対抗状況の事例(川崎市)」に関しては、専門家に対するヒアリング調査を行う。 (3)「脱原発依存とエネルギー政策の転換の事例」に関しては、専門家に対するヒアリングを行い、市民電力の取り組み、自治体の取り組みに関してヒアリングを行う。 (4)市民社会研究会での報告と、ヒアリングを踏まえて、それぞれの事例に関して、制度的課題を整理し、政策提案につなげる。 このような推進方策により、リアル市民社会とデモクラシーの関係性に関する事例研究の報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)今年度の後半に、日本の新しい事例として「辺野古米軍新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の事例」を取り上げることにした。この県民投票は2月24日に実施され、調査研究が次年度にまで及ぶため、専門的知識の供与の謝礼、報告会の費用などを繰り越した。この次年度使用額により、3月末の沖縄本調査における専門的知識の供与の謝礼、3月末に予定しながら延期になった専門家ヒアリングの謝礼、沖縄調査のまとめのための報告会(市民社会研究会)の費用に充当する。 (2)「脱原発依存とエネルギー政策の転換の事例」については、専門家及び市民電力・自治体などへのヒアリングの準備を行ったが、次年度にヒアリング調査を実施するため、調査旅費、及び専門的知識の供与ないしインタビューの謝礼、報告会の費用などに充当する。 (3)ドイツの事例、「ヘイトスピーチをめぐる対抗状況の事例」、「安保法制をめぐる新たな社会運動の事例」についても、専門家に対するヒアリングを実施する。専門的知識の供与謝礼ないしインタビュー謝礼に充当する。 (4)日本とドイツの事例研究については、それぞれの制度的課題を整理し、政策提案をまとめた報告書を作成する。報告書作成のための市民社会研究会(研究協力者をメンバーとする)の開催費、報告書の作成費用(報告謝礼ないし原稿料、印刷費など)に充当する。
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