(1)本研究は、2008年の金融危機以降のリアル市民社会に関するドイツと日本の事例研究を通じて、一方での市民社会の亀裂と、他方での市民活動の新たな活発化の実態を把握・分析し、政府による市民社会の活性化がデモクラシーの新たな発展に寄与する可能性を提示することを目的とする。 (2)ドイツの事例として、「難民支援の市民活動」、「右翼ポピュリズム(Pegida運動、ドイツのための選択肢AfD)をめぐる対抗状況」、「ヘイトスピーチ・ヘイトクライム規制とデモクラシーの活性化」、「脱原発とエネルギー転換」を取り上げ、連邦政府、州政府・自治体政府によるデモクラシーの活性化の取り組み、市民性教育(政治教育)、難民支援の市民活動をはじめとする市民活動の活発化が相互に関係していることを明らかにした。 (3)日本の事例として、「ヘイトスピーチをめぐる対抗状況」、「脱原発依存とエネルギー政策の転換」、「自治体議会改革と市民活動促進政策」、「安保法制をめぐる新たな社会運動」「辺野古米軍新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票」、「寄附税制と寄付文化の醸成(令和2年度に専門家やNPO・一般財団法人などの理事にインタビュー(Zoom会議)調査を実施した)」を取り上げ、米軍新基地建設では国の政府と県政府の間に対立緊張関係があること、自治体議会改革、ヘイトスピーチ規制条例(川崎市)、市民電力と自治体電力の連携・自治体間連携など自治体レベルでデモクラシーの活性化の動きがあること、今後の市民性教育が重要であることを明らかにした。さらに、市民社会の基盤整備として、NPO法人に加えて、一般社団法人・一般財団法人、労働者協同組合法人制度(今後施行)が創出されたが、今後、認定NPO制度の見直し、寄附文化の醸成(NPO自らの目的毎の寄付募集、助成財団・コミュニティ財団・NPO助成基金の促進)という課題がある。
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