研究課題/領域番号 |
17K03568
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 選挙管理 / 独立機関 / 台湾 |
研究実績の概要 |
本年度は、選挙管理機関に関する比較政治制度論の理論的な研究成果を吸収し、台湾の選挙管理機関である中央選挙委員会(中選会)の制度的特徴とその独立性について考察した。選挙管理機関の国際比較では、独立モデル、混合モデル、政府モデルの3つのモデルに分類され、台湾の中選会はアジアの新興民主主義国で多く見られる独立モデルであるとの評価が一般的だが、台湾の中選会は混合モデルと見るのが妥当である。中選会は行政院(政府)に所属する3つの独立機関の1つで、中央省庁と同じレベルの機関である。独立機関とはいえ韓国のように憲法機関ではなく、執政府からの高度な自律性も有していない。また、日本の総務省に当たる内政部と同じレベルの機関である。 中選会の委員は、同一政党所属の委員が3分の1を超えてはならず、形式上は独立性が保たれている。しかし、実際には行政院長(首相)が推薦し、立法院(議会)の同意を得て任命されるため、委員の人選が二大政党のイデオロギー対立と無縁だったわけではない。また、専任の主任委員と副主任委員は有給職だが他の委員は無給職であるため、委員の専門性とそれによる独立性が保証されているとはいえない。 台湾の選挙管理では、選挙関連法規の制定、修正と解釈は内政部の権限とされ、選挙の実施は中選会が担っている。中選会は内政部に対して選挙関連法規に関する提案を行うことは認められているが、行政院に直接提案することはできない。こうした分業のあり方は、台湾の選挙管理の歴史的経緯と関わっている。民主化以前、選挙管理は内政部が担っており、1980年の中選会の成立後も内政部長(大臣)が主任委員を兼任し、職員のほとんどが内政部の職員だった。当時はこうした選挙管理体制がうまく機能していたが、2000年に主任委員が専任職となり、中選会が独立機関と位置づけられていく過程で、中選会と内政部の間に矛盾が目立つようになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初予定しただけの現地調査を実施できなかったものの、選挙管理機関に関する比較政治制度論の理論的な研究成果をある程度吸収することができたことに加えて、台湾の選挙管理機関に関する制度的特徴とその独立性について一定の実証的な考察を行い、今後の調査すべき課題を理解、認識することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果と明らかになった課題を踏まえて、今後は台湾の中央選挙委員会の設立および独立機関としての法制化を中心に、中選会の制度構築および制度改革をめぐる政治過程の実態について明らかにしていきたい。そのための現地調査や比較政治制度論の分野での新たな理論的・実証的研究の成果の吸収にも引き続き努めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度の研究計画への取り組みが他の研究活動によって時間的に圧迫されてしまい、当初予定した回数の現地調査が実施できなかったため。 (使用計画)本年度の旅費に繰り越して使用する予定である。
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