研究課題/領域番号 |
17K03568
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 選挙管理 / 独立機関 / 台湾 |
研究実績の概要 |
本年度の研究活動では、予定どおり2回の現地調査を実施して、民主化以前の選挙と選挙管理に関する一次資料を収集した。こうした研究活動の成果を踏まえて、台湾の選挙管理機関である中央選挙委員会(中選会)の起源とその変容の歴史的経緯を考察した。 戦後台湾における選挙の歴史は長い。1950年以降は台湾省の首長を除く地方公職選挙が定期的に実施され、1972年からは非改選とされてきた国会議員にあたる「中央民意代表」(国民大会代表・立法委員・監察委員)の一部定期改選も始まった。選挙管理業務はもちろん存在していたが、中選会が成立したのは1980年のことだった。国民党一党独裁下にあった当時の公職選挙法にあたる「動員戡亂時期公職人員選舉罷免法」に中選会の関連規定が盛り込まれた。台湾の選挙管理機関の起源はこの時点にさかのぼることができる。ただし、中選会の主任委員は内政部長が兼任するなど、人員面で内政部との一体性が強く、選挙管理機関の独立性は極めて低かった。民主化にともない公職選挙法の改正も繰り返されたが、中選会の独立性に大きな変化はなかった。 2009年5月、「中央選挙委員会組織法」が制定され、同年7月に施行された。この「中選会の法制化」を契機に、中選会は独立機関の1つに位置づけられた。主任委員と副主任委員は専任職となった。行政院長(首相)が推薦し、立法院(議会)の同意により任命され(任期4年、1回だけ再選可)、実際にこれまで党派的中立を重視した人事が行われてきた。昨年度の研究成果では、「独立モデル」との国際的な評価とは異なり、台湾の中選会は「混合モデル」と位置づけるのが適当であることが示された。そうしたなかでも、中選会は独立性を高める方向で変容を遂げてきたことが、本年度の研究から明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の課題は、台湾の選挙管理機関である中央選挙委員会(中選会)が民主化とその後の民主政治に与えた影響を理論的・実証的に分析することであった。しかし、中選会の起源とその変容の歴史的考察にとどまり、中選会の政治的帰結の分析には踏み込むことができなかったから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の進捗の遅れを克服するために、中選会が民主化とその後の民主政治に与えた影響の理論的・実証的な分析に取り組み、台湾における選挙管理機関の政治的帰結を考察する。ただし、世界的なコロナウイルスの感染拡大にともない、目下現地調査の目途が立たず、また日本国内での資料調査も大幅に制約されており、当面は思うような進捗が期待できない恐れがある。これまで収集した資料の活用に加えて、オンラインでの調査活動などの対応策を駆使することで、可能な限り研究活動を推進させたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度の研究計画への取り組みが他の研究活動により時間的に圧縮されてしまい、現地調査はほぼ予定通り実施できたものの、収集した資料の整理・分析を含めて国内での研究活動を思うように進めることができなかったため。 (使用計画)コロナウイルスの世界的な感染拡大にともない、台湾での現地調査、国内での調査活動とも大幅に制約されており、今後の進捗への影響が懸念される。当面はオンラインでの調査活動に重点を置かざるを得ないことが予想されるため、当初の使用計画の方針を基本的には維持しつつ、状況と必要に応じてオンラインによる研究活動に関連した物品の購入を使用計画に加えたいと考えている
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