本研究は,イギリスのEU国民投票を主な事例として取り上げて,イングランド・ナショナリズムの政治化によってEU離脱派のキャンペーンにどのような特色がもたらされたのか,そして,EU離脱決定後のイギリスの政党政治において主要政党の戦略的行動にどのような変化がもたらされたのか,という点について明らかにすることを目的としている。 本研究の最終年度にあたる令和元年度の研究においては,12月12日にEUからの離脱を最大の争点として総選挙が実施されたことから,投票日前後の10日間イギリスを訪問して,主要政党の関係者に聞き取り調査を行ったのに加えて,シェフィールド大学の政治学研究者と総選挙,EU離脱問題などをめぐって意見交換する機会を持った。また,本研究で得られた知見の一部を,研究会などで発表することができた。さらに,本研究の研究成果の一部を学術論文や研究書の分担執筆を通じて公開することになった。 本研究の研究成果の内容については,後日提出する研究成果報告書において詳しく説明することになるが,EU離脱とイングランド・ナショナリズム,そして,アングロスフィア(英語圏諸国の統合)の関連を示す本研究の成果の一部については,上述のように令和元年度の研究報告や学術論文においてすでに発表しているが,さらにEU離脱とイングランド・ナショナリズム,アングロスフィアの関係を取り上げた共著の研究書を,令和2年度中に出版する予定である。 なお,本研究では研究開始当初に挙げた課題について相当程度の成果を上げることができたとすることができるが,残された課題も少なくない。イングランド・ナショナリズムと政党政治の関係を検討するという本研究で掲げた研究課題について,今後さらに研究を深めていかなければならないと考えている。
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