研究課題/領域番号 |
17K03572
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大津留 智恵子 関西大学, 法学部, 教授 (20194219)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメリカ / 移民 / 連邦政府 / 州政府 / 市民社会 |
研究実績の概要 |
2017年度は、アメリカの移民制度をめぐる最近の文献資料を入手し、対立点や課題をめぐる研究の動向を確認すると同時に、本課題において新たに取り組む地方政府や市民社会と移民政策の接合面を取り扱った研究を整理した。最初の現地調査の対象として、連邦政府による移民法改正の動向を調べるためにワシントンDCを選んだ。また、地方政府の対応事例として、ラテン系の中でもキューバ系を中心としたコミュニティを抱え、2016年大統領選挙でも移民問題が関心を集めたマイアミ市に絞った。議会のデータベースを利用しながら新たな移民法案をめぐる議論を整理し、中心的な立場にある議員への聴き取り調査に臨む計画であった。しかし、トランプ政権が若年層の非合法移民(DREAMER)への政策転換を発表する一方、議会での新たな法案成立の手続きが党派対立により進まなかった。そこで聴き取り調査の対象を市民社会に絞り、全国的な組織を持つ移民支援団体への聴き取り調査を実施した。聴き取り調査から、移民コミュニティが政権交代により受けた影響が浮き彫りになった。続けてマイアミにおいて研究者と移民コミュニティに対する聴き取り調査を予定していたが、日程がハリケーン襲来と重なり、州外避難命令が出されたため訪問を断念し帰国した。年度の後半は、議会による移民法改正が進まない中で、オバマ政権において非合法移民の救済のために用いられた行政措置が持つ政治的な意味を整理し、トランプ政権が発した行政命令と比較しながら論文としてまとめた。また、移民法改正が進まない大きな政治的環境としてのポピュリズムの興隆についての考察を、本の一章としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査の訪問予定であった2都市のうちの1都市が、移動中にハリケーン襲来で避難命令が出たため訪問できなくなったため、現地調査を中断して帰国することとなった。現地調査の中断により実施できなかった情報収集は、文献の購入と国内で開催された関連研究会に参加して意見交換する形で補足した。実施できなかった現地調査は、次年度以降に訪問を調整する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の予定通り調査研究を進めていき、次年度は移民に対して厳しい態度をとる州の現地調査に取り組む。ただし、非合法移民をめぐる姿勢の違いから、トランプ政権との間で法的対立が生じている州の現状を把握するため、中間選挙のタイミングで追加的に現地調査を行う。具体的にはカリフォルニア州を選び、州政府関係者および市民団体への聴き取り調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査の訪問予定であった2都市のうちの1都市が、移動中にハリケーン襲来で避難命令が出たため訪問できなくなった。そのため現地調査を中断して帰国し、その期間の滞在費が未使用分として残った。現地調査で実施できなかった情報収集は、文献の購入と国内で開催された関連研究会に参加して意見交換する形で補足した。補足的な資料購入および国内出張の経費と、現地調査の中断により未使用となった経費との差額は次年度に繰り越し、次年度以降に訪問を調整する予定である。
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