一党優位制の典型のトルコを事例として、世論調査データを用いて、(1)長期的および短期的な経済業績、汚職認識、社会的亀裂が政権支持に影響を与えているのか、(2)一党優位制の定着から衰退の過程においてこれらの変数の相対的な重要性はどのように変化するのか、を統計的に検証するという研究目的に従い、2017年度はまず、投票行動規定要因を焦点にした調査票を、先行研究調査をもとにして作成した。そしてその調査票にもとづく世論調査を、トルコを代表する世論調査会社であるMetropoll社に依頼した。同社は、2017年9月にトルコのNUTS2(欧州統計局が定めた地域統計区分単位[全3階層]の第2階層)の全26地域を代表する28県(全県数は81)で層化抽出法と重み付け補正を用いて1770名と対面世論調査を実施した。この調査においては、大統領選挙・国会選挙での投票先、各種経済業績評価、政治的帰属意識、宗教・宗派属性、民族的属性などの設問を設けて、投票行動を規定する要因を調査した。その結果得られたデータセットの予備的分析では、有権者は与党への支持を決める上での各種経済業績評価、政治的帰属意識、宗教・宗派属性、民族的属性の重要性の違いを検証した。また7月に実施したアンカラとイスタンブルでの現地調査では、(1)国内で発表された投票行動と政党制度に関する研究の収集、(2)世論調査会社や大学、研究機関で実施された調査データの発掘、(3)2019年予定の大統領・国会当時選挙に関する最新の情報収集、(4)および専門家との意見交換を行った。
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