研究課題/領域番号 |
17K03578
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
近藤 久洋 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (20385959)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 新興国 / 南南人道主義 / 国際人道レジーム / 規範 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
近年、新興国が国際政治経済においてプレゼンスを高めるのと比例するように、新興国は対外援助においても注目を集めるようになってきた。新興国の台頭は対外援助のなかの人道支援においても顕著になってきており、新興国は人道支援の「受け手」から「送り手」に変容してきている。本研究は、新興国の人道支援に焦点を絞り、「新興国の『南南人道主義』は国際秩序を変えるか」という大きな問いを扱う。具体的には、(1) 新興国が行っている人道支援を説明するため「南南人道主義」(south-south humanitarianism)という概念を提示し、(2) 「南南人道主義」が形成されたダイナミズムを究明し、(3) 「南南人道主義」が既存の国際人道レジームに及ぼすインパクト等、今後の人道支援への政策的含意を導く。 2017年度は、本研究が対象とする中国・韓国・台湾・南アフリカ・アラブ首長国連邦(UAE)の人道支援のうち、南アフリカの事例について現地調査を行い、その結果、次のことが明らかになっている。 第一に、南アフリカの支援は、当初はAfrican Identityを強調し、アフリカの人道支援に積極関与する方針であった。しかし、第二に、近年の経済失速、前大統領の汚職疑惑による援助への関与低下、官僚機構内の権力闘争の結果、「南南人道主義」に積極関与することが難しくなっている。第三に、このことから言えるのは、新興国という新たに形成された集団は、(1)新興国間で政治・経済のパワーに著しい差があり、(2)比較的脆弱なパワーにある新興国は、特に時の情勢に左右された対外政策をとりうること、(3)「南南人道主義」は恐らく相当な多様性を内部に持ちうること、であろう。 なお、2017年度の研究成果は、国内の外部査読付きのペーパーとしてpublishされることが決まっている(2018年4月刊行予定)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査計画・現地調査対象国は、他業務との関連や研究との関連で多少変更をしている。具体的には、当初は中国・韓国の人道支援を調査するはずであったが、とりわけ人道支援における変化が著しい南アフリカを調査対象として選択した。 但し、研究の進捗においては、学会報告2回、査読付き論文1点を公刊することができ、「順調な推移」と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度に実施予定であった中国・韓国の人道支援のうち、韓国の人道支援を2018年度に行う。同時に、当初計画通り、UAEの人道支援も2018年度に行うこととする。各国での調査項目については、当初の実施計画から変更はない。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、本科研費初年度は、別のドナーにおける現地調査を予定していたが、研究を進めて行くなかで、南アフリカ調査を優先して行うこととした。加えて、南アフリカ調査に関心を持つ援助機関が出張のアレンジ(面談の確保等)から旅費負担まで行ったため、本科研費からの支出とはならなかった。そのため、本科研費の初年度支出が当初予定よりも下回った。
|