研究課題/領域番号 |
17K03578
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
近藤 久洋 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (20385959)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 新興国 / 南南人道主義 / 国際人道レジーム / 規範 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
近年、新興国が国際政治経済においてプレゼンスを高めるのと比例するように、新興国は対外援助においても注目を集めるようになってきた。新興国の台頭は対外援助のなかの人道支援においても顕著になってきており、新興国は人道支援の「受け手」から「送り手」に変容してきている。本研究は、新興国の人道支援に焦点を絞り、「新興国の『南南人道主義』は国際秩序を変えるか」という大きな問いを扱う。具体的には、(1) 新興国が行っている人道支援を説明するため「南南人道主義」(south-south humanitarianism)という概念を提示し、(2) 「南南人道主義」が形成されたダイナミズムを究明し、(3) 「南南人道主義」が既存の国際人道レジームに及ぼすインパクト等、今後の人道支援への政策的含意を導く。 2019年度には、韓国・UAEにおける現地調査を実施することを予定していたが、2019年9月に国連ESCAPにおける最終報告者を務めることになり、現地調査実施予定の夏季休暇を含め3ヶ月をESCAP報告の準備に費やした。その準備により、中国・UAEの人道支援に関する文献収集・分析を行い、現地調査を実施できなかったものの、ESCAP報告ではUAEの人道支援を含めることができた。国連ESCAP報告の中で明らかにしたのは、次の通り。(1)中国は人道主義に表面的に異議申し立てをすることはないが、自然災害被害への人道支援に限定する傾向があり、国際人道レジームとは一定の距離を保っていた。(2)UAEを始めとする湾岸ドナーは、イスラム教の連帯規範を基調としているが、近年では国際人道レジームと協調関係を深めてきている。これらのことから言えるのは、今回のプロジェクトの分析対象の新興国には、多様性が見られ、人道主義・人道支援のあり方と、その形成要因もまた多様である、ということになろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査2件を予定していた2019年9月に、国連ESCAPにおける最終報告をすることが必要になったため。この国連会合での報告には、3ヶ月の準備期間を要し、国連会議終了後も、国連会議報告集の特集号編纂者を務め、2020年3月までその編集業務が発生した。 ただし、現地調査を実施できなかったものの、ESCAP報告と国連会議報告集ではUAEの人道支援に関する自身の論考も公表することができており、論文発表(英語2件(査読あり)、日本語1件)、国連ESCAPでの口頭発表1件と、研究成果としては予定以上であった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に実施予定であった韓国・台湾の人道支援に関する現地調査を行うこととする。各国での調査項目については、当初の実施計画から変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外現地調査2件を予定していた夏季休暇に、国連ESCAP報告の準備が入ることになり、春季休暇中も、報告集の編集責任者として編集業務が発生したため、海外調査のための旅費・謝金の支出を伴う研究活動ができなかったため。 2020年度には、韓国・台湾における現地調査を実施し、韓国・台湾の人道支援に関する情報を収集し、両人道支援の比較研究を研究成果として取りまとめる。
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