研究課題/領域番号 |
17K03584
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻田 俊哉 大阪大学, COデザインセンター, 講師 (90644401)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レジリエンス / 国際関係論 / イスラエル / 安全保障政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、イスラエルの安全保障政策におけるレジリエンス強化に向けた具体的な取組と課題を分析することを目的としている。近年、様々な分野においてレジリエンス構築の必要性に対する認識が高まっている一方で、経済や防災等の他分野と比べ、国際関係論の分野では国家レベルでのレジリエンス強化のための具体的方法に関する研究は着手されたばかりで、事例の蓄積も乏しい。本研究の初年度では、研究計画のとおり、レジリエンスの概念整理、分析枠組みの構築とその検証作業を進めた。 分析枠組みの構築とその妥当性を確認するために、工学や学際的な研究に従事する研究者との意見交換を行った。また、駐日イスラエル大使館における意見交換会、テルアビブ大学モシェ・ダヤン中東アフリカ研究センター所長のラビ教授を招いた会議、キングスカレッジロンドンのツーク客員教授を交えた意見交換会等を企画または開催し、研究成果の一部について発表と議論を行った。 これらの研究活動や調査の結果、本研究では、安全保障分野におけるレジリエンス構築には、事態発生時の被害による国民の日常生活や社会経済活動への影響に関する想定からリスクの最小化を目的とする戦略が求められることが確認できた。また、レジリエンス構築が次の四つのフェーズから構成されるとの仮説を立て、検証を進めることにした。状況変化と事態悪化に対する①準備、②適応、③対応、④回復、の四つのフェーズである。次年度以降は同枠組みに沿って事例分析を進める予定である。また、国内外の研究者との意見交換会を通じて、次年度以降に予定していたレジリエンス・マネジメントのトレードオフに関する考察を計画当初より進めることができた点が収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画通りに、レジリエンスの概念整理、分析枠組みの構築とその検証作業を進めることができ、事例分析に関する資料収集も概ね順調であった。特に、別の財源で実現したものの、駐日イスラエル大使館等の協力や助言を得て、イスラエルの研究者との意見交換会等を国内にて計画当初より複数回開催できたことで、分析枠組みの構築とその妥当性に関して研究を進めることができた。加えて、次年度以降に予定していたレジリエンス・マネジメントのトレードオフに関する分析に着手することができ、その結果、イスラエルがレジリエンスに関する政策を重視したあまり生じた負の側面に関し考察を深めることができた。 初年度では、現地にて開催されたサイバーに関する国際会議の日程と都合が合わず、現地調査を実施することができなかったが、本年度1月に現地にて同様なサイバーに関する国際会議が開催されるため、その時期に合わせて、現地調査とインタビュー調査を実施する予定である。サイバーセキュリティ政策の事例分析に関する資料収集はほぼ終えたほか、イスラエル北部情勢、南部情勢の他の二つの事例に関する資料収集も順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに実施する予定である。特に、レジリエンス・マネジメントのトレードオフに関する分析をさらに進め、事例分析の結果と合わせて、国内外で研究報告を行う予定である。 また、引き続き他分野の研究者やイスラエルの研究者と積極的に交流を図り、ワークショップの開催等を通じて、安全保障政策におけるレジリエンスに関する全体的な特徴と課題をまとめる。三年目には、研究報告のみならず、市民や実務家対象のワークショップを開催し、本研究の日本への示唆を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、イスラエルにおける国際会議の日程と訪問予定機関の都合上、現地調査を実施することができなかった。また、国内外の研究者を交えた意見交換会を複数回実施したが、その旅費分は先方負担等の別財源からの支給であったため、本予算からの謝金等は発生しなかった。次年度において、研究計画通りに、イスラエルにおける現地調査に加えて、米国における学会報告を行う予定であり、ワークショップ等を開催する予定である。
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