本研究は、イスラエルを事例として、安全保障政策におけるレジリエンス強化に向けた具体的な取組と課題を明らかにすることを目的とした。 研究の第1段階では、他分野で発展したレジリエンスの概念分析に関する研究をまとめ、安全保障政策におけるレジリエンスに関する分析枠組みを構築した。第2段階では、適応、準備、耐性、回復、の4要素に基づく分析枠組みに沿って、主にイスラエルのサイバーセキュリティ政策を分析し、取組課題等について検討した。その研究成果の一部を論考や国内学会の発表に加え、国際学会(ISA)の年次大会のレジリエンスに関するセッションにおいて発表した。第3段階では、事例分析に関する包括的まとめの作業を進めた。その間、イスラエルで現地調査を行い、サイバーセキュリティ等に関する国際会議に参加したほか、現地の大学教員との会議等を通じて、イスラエルと日本のレジリエンスに関する取組について意見交換を行った。 本研究の三年目下半期では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、国際学会の延期と市民や実務家対象のワークショップ企画のキャンセルなど、研究計画にやや遅れが生じた。これに伴い最終年度では、これまでより一層オンライン会議を通じてイスラエルの研究者や実務家と意見交換等を行い、今までとは異なる方法で研究の途中成果や進捗状況を確認できる機会を得ることができた。オンライン上でも現地からの協力を得ながら研究を進めることができたことで、研究計画に生じた遅れを取り戻すことが可能となった。具体的には、事例分析と現地との意見交換等を通じて、レジリエンスの構築が可能となったイスラエルのイノベーションエコシステムについて知見を広め最新動向を把握することで、その研究成果の一部を論文計3本に反映することができた。また、こうした研究の展開が新規テーマの発掘につながったことが大きな収穫であった。
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