本研究の目的は、政権交代を介した米国のアジア外交の連続と非連続を、オバマ政権の推進したアジア重視のリバランス戦略の形成と展開をめぐるメカニズムから、説明することであった。 オバマ政権は、2009年1月に誕生し、従来の外交・安全保障政策とは距離を置き独自の基本的な姿勢として、このリバランス政策を位置づけた。しかし、この政策は米国の外交政策の基調とはならなった。 本研究は、このリバランス戦略が(1)なぜ外交政策の基調とならなかったのか、(2)リバンス戦略を進めた結果として何が実現できたのか、(3)次の政権の外交政策与える課題とは何か、などの問いに答えた。 上記の目的を達成するためには、戦後米国のアジア外交の軌跡をなぞるだけでなく、第1に政権交代によって変化した外交課題を生み出す各政権の外交政策の基調を明らかにした。第2に、民主党政権の継続となる政権交代そして共和党政権の継続となる政権交代、あるいは民主党から共和党へ、そして共和党から民主党へ継続とならない政権交代のぞれぞれの特徴を見出した。第3に、テロとの戦いを開始したブッシュ(息子)政権の誕生がもたらした米外交政策の基調を検討した。 このようなオバマ政権を生み出す米国の国内政治と米国の対外関係に関する研究の整理が、不可欠である。それによって、オバマ政権が従来の外交・安全保障政策の何を変更しようとしたのが、明らかとされた。そして、なぜアジア重視のリバンス戦略を追求するのか、それを構成するものは何であったのか、そのための国内説得の論理を何であったのか、などを明らかにした。
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