研究課題/領域番号 |
17K03593
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
川嶋 周一 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (00409492)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ヨーロッパ統合 / 国際主義 / 連邦主義 / 20世紀 / 機能主義 / ローマ条約 |
研究実績の概要 |
本研究は、欧州統合史研究と国際関係史研究を接合し、20 世紀前半における欧州統合認識の形成と変容を、世界認識との関わりから再検討するものである。 具体的には、ベルギーの書誌学者・平和活動家のポール・オトレ、機能主義者、連邦主義者の国際秩序観ならびに欧州統合観を取り上げ、その思想の展開に影響を与えた国際状況の相互関係に焦点を当てることで、欧州統合を20 世紀史の中に位置付けることを最終的な目標とする。 2018年度においては、ドイツのキリスト教民主主義政策文書館(ドイツの政党キリスト教民主主義同盟CDUの文書館)に所蔵されているローマ条約期の交渉史料、フランス国立文書館に収録されている連邦主義関連の諸文書(Jean Coutrot、USDR、Marceau Pivertなどの私文書群)、フランス国立文書館手稿部門が所蔵しているアレクサンドル・コジェーブ文書、ロンドンスクールオブエコノミックス(LSE)付属文書館が所蔵しているデイヴィッド・ミトラニー文書を閲覧し、その所蔵状況を確認し、可能なものについては、関係資料を複写・収集した。 前年度の研究実施の中で、1958年のローマ条約の成立を終着点として研究の再構成が必要であると認識したが、本年度は当初の研究計画を一部変更して、このローマ条約における連邦主義と機能主義の関係を、西独政府内の議論を軸として検討することとした。当該検討については、2018年度中に論稿の形で執筆し終えた。今後、本論稿を、適宜外部の媒体や研究報告として発表し、フィードバックを受けたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた史料調査、史料収集を実施でき、また、ローマ条約成立期における研究について、2018年度後半期に集中して取り組んだことにより、論稿という形で一つの形にまとめることができた。2017年度に取り組みんだオトレに関する検討については、まだ途上であるものの、全体を通じてみれば、おおむね順調に進展していると言えるのではないだろうか。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針として以下を予定している。 1)アーカイブ史料収集の推進:2019年度に、連邦主義・国際主義・機能主義に関する二度の史料収集を行う。2020年度は研究計画最終年度であるので、史料収集は可能な限り控え、研究取り纏めに集中する予定である。 2)オトレ研究の継続:ポール・オトレの国際秩序認識を抽出する作業に加え、オトレの盟友であったアンリ・ラフォンテーヌの欧州統合観についても検討を進める。さらに、ノイラートなどの同時代的な哲学的認識論とオトレの国際認識の交錯について、検討を引き続き進める。 3)連邦主義・機能主義、ローマ条約研究の継続:連邦主義と機能主義が戦間期から戦後からローマ条約形成期にかけて、どのように論じられ方が変わっていき、欧州統合に影響するのかについて、研究論文を中心とした先行研究の整理と、個別論点の設定に引き続き注力する。 4)研究会発表:オトレに関する研究報告か乃至は連邦主義・機能主義に関する研究報告を、可能な限り2019年度に実施する。 5)成果の発表:オトレに関する論考、連邦主義・機能主義、ローマ条約に結実する欧州統合理念の三点に関して、本科研費研究成果として論文として将来的に公表する。ローマ条約に関する研究については、本研究課題着手以前に従事していた研究の研究成果と合わせて、書籍として刊行することを将来的に予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月にイギリス、ベルギー、フランスでの史料収集を予定しており、実際にイギリスとベルギーでの史料収集は実施したが、諸般の事情で本科研費による執行とすることができなかった。そのため、本来当該史料収集に掛かる経費として考えていた金額が2018年度中に執行できず、次年度使用することとなった。
|