本研究は、欧州統合史研究と国際関係史研究を接合し、20 世紀前半における欧州統合認識の形成と変容を、世界認識との関わりから再検討するものである。 具体的には、ベルギーの書誌学者・平和活動家のポール・オトレ、機能主義者、連邦主義者の国際秩序観ならびに欧州統合観を取り上げ、その思想の展開に影響を与えた国際状況の相互関係に焦点を当てることで、欧州統合を20 世紀史の中に位置付けることを最終的な目標とする。 機能主義者については、ルーマニア出身でイギリスで確約したミトラニーの資料を精査し、ミトラニーが連邦主義を批判していたそのロジックと、第二次大戦後に大陸ヨーロッパにおいて大きく花開いた連邦主義をどのように認識していたのかについて研究を進める。 2023年度は、2020年度からと同様、ミトラニーに関する検討およびフランスの連邦主義者およびアレクサンドル・コジェーブに関する研究資料を収集し、1940年代から50年代にかけての世界認識と連邦主義、そしてヨーロッパ統合の知的連関を検討した。この検討のために、イギリスおよびパリにおいて史料収集を行った。 この様な史料収集は、2020年2月末から起こった新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、2020年から2022年度までの3年間一切実施できずにいたことである。本来であれば研究期間内に、この史料収集を受けて、具体的な史料精査を行い、機能主義と連邦主義に関する分析を行う予定だったが、コロナ禍のためにその分析自体は本研究期間後に行われることになるだろう。
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