研究課題/領域番号 |
17K03597
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
有馬 哲夫 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10168023)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 原子爆弾投下 / 原子力平和利用 / ケベック協定 / ハイドパーク・メモ / 米・英・加 / 暫定委員会 / 合同方針決定委員会 / 戦争終結 |
研究実績の概要 |
アメリカ国立第2公文書館、イギリス公文書館、カナダ図書・公文書館で原爆使用決定時、および使用後の米、英、加の原爆・原子力平和利用の議論にかかわる公文書を収集した。その結果、以下のことがわかった。日本に対する原爆の使用の決定については、1944年までは同年9月18日のハイドパーク会談(フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領とウィンストン・チャーチルの間の)でも、チャーチルが日本に原爆を使用すべしと発言していたことからもわかるように、イギリス側が積極的であり、その後もケベック協定の合同方針決定委員会(Combined Policy Committee、ケベック協定国米、英、加による)を通じて自国の意思をアメリカ側の暫定委員会(Interim Committee,原爆と平和利用について大統領に諮問する委員会)の決定に反映させようと努力していた。それが功を奏して1945年5月31日に暫定委員会が結論を出したとき、イギリス大使館公使のロバート・メーキンは、それがイギリスの考えていた線とほぼ一致すると本国に報告することができた。ただ一つ違っていたのは、イギリス側が原爆の使用に際し、日本に事前警告するべしとしていたのが無視されて、無警告になってしまったことだ。これは原爆を無差別大量破壊から無差別大量殺戮へ兵器へと変えてしまった重要な意味を持った決定だった。また、チャーチルは日本の軍事的栄光に配慮して、アメリカの無条件降伏原則を変更して、条件付降伏にするようポツダム会議中の同年7月18日にハリー・S・トルーマン大統領を説得したが、これは徒労におわった。一言でいえば、イギリスは原爆の日本への使用に関して、アメリカに同意していただけでなく、むしろリードしていたのだが、事前警告と条件付降伏に関してはアメリカを説得することはできなかったのである。以上これまでの定説を覆す知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年はアメリカ(カレッジパーク)、イギリス(ロンドン)、カナダ(オタワ)の3カ国をめぐってアメリカ国立第2公文書館、イギリス公文書館、カナダ図書・公文書館で原爆使用決定時、および使用後の米、英、加の原爆・原子力平和利用の議論にかかわる公文書を収集した。このうちカナダのカナダ図書館・公文書館はこれまでにいったことのない公的施設で、文書の閲覧に必要な手続きなどがスムーズに行かなかったが、これまでアメリカやイギリスでは見ることもできず、あるとも思わなかった公文書を多数収集することができた。3年の交付期間の初年度としては、かなりスムーズが滑り出しといえる。しかし、とくにアメリカ国立第2公文書館には、ハーヴェイ・バンディファイルやハリソンーバンディファイルなど、マイクロフィッシュにはいっているために、閲覧に時間がかかるために、まだチェックが終わっていない公文書が相当残っている。文書番号の若いものから、時系列をおって、すべてを閲覧し、写真にとるということをしているが、2年度の進捗如何では、カタログで的を絞って、閲覧し、写真にとるということも考えなければならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きアメリカ国立第2公文書館、イギリス公文書館で原爆使用決定時、および使用後の米、英、加の原爆・原子力平和利用の議論にかかわる公文書を収集する。カナダに関しては、トロント大学のアーカイヴに原爆開発や原子力開発に関わった研究者の個人アーカイブが所蔵されていることがわかったので、こちらも閲覧し、資料収集することで、政府関係の量に乏しい公文書の補完としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度はアメリカ、カナダ、イギリスの3カ国へ行くのに周遊航空券を購入し、どういうわけか60万円程度の価格が35万円程度で済んだため。今年もおなじことを試みたが、だめで、今年はイギリスとアメリカを別々に購入の予定。 次年度使用額の236,997円はすべて旅費として使用する。
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