今年度は、対外政策におけるシンクタンクの役割、公共政策決定過程における政府、企業、学者の連係プレーに関する研究を行った。 中国において、公共政策分野に関する政策決定は、中央が政策の方向性を決め、各省庁、各地方政府、大手の国有企業などが具体的な政策を制定するという二段階の政策決定がなされている。 この分野における政策決定に関して、これまで各省庁、各地方政府、大手の国有企業は解釈権を有しており、自身の管轄の権限のなかで各々の政策を比較的自由に推進してきた。そして、分野別の縦割りの性質(「条」)よりも、中央と地方の対立(塊)の性質が顕著に現れている。 他方、習近平体制に入ってから、「頂層設計」が強調されるなか、新たに導入された条例により、各地方政府や大手の国有企業に委ねられていた「解釈権」に基づく政策決定権が厳しく制限されるようになり、「計劃外交」が推進されるようになった。対外政策で計画性を追求して、企業や地方政府を動かしていくことは、改革開放以降の中国の対外政策の展開と本質的に異なる。習近平体制のもとでは、「対外関係、対外宣伝、経済と貿易、外資」の連動が求められており、政府主導により政府の対外戦略に基づく経済関係の構築が推奨されている。 「計劃外交」のもとで、様々な計劃が新たに導入されており、実態からかけ離れた計画のもとでは地方政府の動員すらうまくいかないケースもみられる。他方、中ロ両国の関係促進メカニズムは比較的進んでおり、金融や宇宙協力など、中国政府が動かせる計画は順調に進んでいる。
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