研究課題/領域番号 |
17K03600
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中村 英俊 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (80316166)
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研究分担者 |
BACON Paul.M. 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (40350706)
吉沢 晃 同志社大学, 政策学部, 助教 (90743857)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日欧政治関係 / 安全保障アクター / 国際統合論 / リベラル国際秩序 / EU / ヨーロッパ統合 / ブレグジット / イギリス政治外交 |
研究実績の概要 |
昨年度末から本年度初めにR・ウィットマンを招聘して「安全保障アクター」概念に関する国際共同研究を展開することができた。本年度は、これ以外にも、ウォーリック大学(UW)、ベルリン自由大学(FUB)、ブリュッセル自由大学(ULB)との国際共同研究を中心に、本研究代表者がコーディネートする研究拠点形成事業の大枠内で充実した研究を進めることができた。研究代表者は9月にUW、2月にFUB、3月にULBを訪れて、ワークショップ・セミナーに参加できた。 9月はイギリスのEU離脱期限が延期されている状況下で「Brexit後の日EU・日英関係」をテーマにワークショップを開催し、主催者のC・ヒューズ、R・ウィットマン、H・マイヤーほかと一緒に、日本、EU、そしてイギリスが「安全保障アクター」として果たしてきた役割を議論する機会を得た。FUBのT・ベルツェルが拠点リーダーとして立上げた大型研究プロジェクトは「リベラル規範をめぐる諸論争」をテーマとしており、2月には「リベラル国際秩序」をめぐる様々な議論に接することができた。ULBとの「日EU関係」をテーマとする定期的なワークショップは規模を縮小して実施できた。 本年度は研究分担者(P・ベーコン)との共著論文の一つが公刊された。これは2016年6月にUWで開催されたワークショップを基に企画されたC・ヒューズほかが編者の共著書に収録されたもので、比較アクター論の観点から日本の「安全保障アクターらしさactorness」を論じている。別のテーマで査読誌に投稿した共著論文もあり、研究成果の公刊へ向けた執筆も継続している。 本年度も全般として、「リベラル国際秩序」をめぐる学術的・実務的な論争を踏まえながら、「安全保障アクター」概念を独自に定義し、EUと日本という国際アクターの行動を正確に描写し、両者の政治関係が持つ意義を考察し続けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の3年目は、「流動化するグローバルなリベラル秩序におけるEUと日本:地域間研究の拠点形成」を研究交流課題名に研究代表者がコーディネーターを務める(研究分担者2名も参加する)研究拠点形成事業(A.先端拠点形成型)の2年目と重なった。ベルリン、ウォーリック、ブリュッセル、ケントなどの研究協力者との共同研究が進展した。 ベルリン自由大学(FUB)のベルツェル・リッセ両教授が展開してきた「規範伝播」モデルに基づいて、EUが死刑制度をめぐる人権規範を日本に伝播しようと試みた事例を考察した、ベーコンと中村の共著論文を査読誌に投稿した。 リベラリズムの危機(=中国やアメリカの影)の下で進展する日EUパートナーシップをテーマとして共著書を編集・公刊したウォーリック大学のC・ヒューズ教授が主催するセミナーを開催し、Brexit後を見据えた日EU関係、日英関係、英EU関係をテーマとした議論を重ねることができた。2020年1月末にイギリスのEU離脱協定は発効したが、予想通りにBrexit後のイギリスをめぐる国際関係の将来は不透明である。 昨年度末から約3週間、ケント大学のR・ウィットマン教授を招聘することが叶い、4月にはワークショップを開催して「安全保障アクター」概念に関する議論を重ねることができた。 リベラル国際秩序における安全保障アクターとしてのEUと日本に関して、トランプ政権下でアメリカの認識がどのように変化してきたのかを追加調査する必要が生じたので、補助事業期間延長を申請することにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題と研究拠点形成事業との相乗効果が発揮できているので、それを最大限に活かしたい。ベルリン自由大学FUB、ベルギー自由大学ULB、ウォーリック大学、ケント大学、オックスフォード大学などの研究協力者たちとの国際共同研究を展開しつづけたい。 リベラル国際秩序における安全保障アクターとしてのEUと日本に関して、どのようにトランプ米政権の認識が変化してきたのかを追加調査する必要が生じている。補助事業期間の延長を認めていただいたので、コロナ禍で研究出張(招聘を含む)が困難かつ非効率な場合はWeb会議システムなどの代替策も講じて、本研究課題の最終年度としての総括を着実に実行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
リベラル国際秩序における安全保障アクターとしてのEUと日本に関して、トランプ政権下のアメリカでどのように認識が変化してきたのかを追加調査する必要が生じたことを主たる理由として、アメリカ出張の必要性などから補助事業期間の延長を申請した。その後、新型コロナウイルス感染症が欧米でも拡大した状況下で研究出張(招聘を含む)が困難かつ非効率なことも予想される。その場合はWeb会議システムなどの代替策も講じて、本研究課題の最終年度としての総括を着実に実行していきたい。
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