2023年9月にベルギーの首都ブリュッセルにて現地調査を行った。研究課題の対象国であるノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン、スイスの各在EU代表部の大使や公使、欧州委員会並びに欧州対外行動庁の対EFTA諸国政策担当者に、これまでのEFTA諸国とEUとの関係、今後の行方を中心にインタビュー調査を実施した。 ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインはEUとEEA(欧州経済領域)を構成しており、そのために3国は一方的にEUで制定された法律の遵守を求められているように見えるが、欧州委員会が法案を提出する前に、欧州委員会におけるコミトロジーに正式に参加して、事前に意見調整する機会があるため、それら3国の国益は十分に法案に反映されているとの証言を得た。更に、法案の審議過程では、欧州理事会並びに欧州議会にロビーイング活動を展開し、自国に不利な方向に審議が進まないように水面下で動いているとしている。また、EEAに関しては欧州委員会が管轄し、それ以外のEUの政策領域では欧州対外行動庁が管轄することになったため、若干ブリュッセルでの事前交渉が複雑になっているが、大きな障害にはなっていない模様である。それ故、3国は、EEA条約の枠組みの中で、公式・非公式にEUの政策決定過程に関与することが可能なルートを確保しており、EEAを通じて巨大なEU市場へのアクセスを維持することで、3国の経済的な発展を促すことが出来ていることが明らかになった。 他方、スイスは、上記3国とは異なり、EEAに参加せずに、EUとのバイラテラルな協定で関係維持を模索してきたが、スイス国内での右派系勢力がスイスへの出稼ぎ労働者の問題などで批判的であり、長年交渉してきたEUとの枠組み協定を断念することになった。同協定の破棄はスイス経済にとって打撃であり、反対勢力をどう説得するか難しい局面にあるということが明らかになった。
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