研究課題/領域番号 |
17K03602
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
杉山 知子 愛知学院大学, 総合政策学部, 教授 (90349324)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 移行期正義 / ポスト移行期正義 / ラテンアメリカ / 民主主義 / 記憶 / 冷戦期 / アルゼンチン / チリ |
研究実績の概要 |
平成30年度は、冷戦期のラテンアメリカ諸国の権威主義体制の誕生及びその体制に影響を与えたと思われるアメリカの影響力についての考察をし、学会発表を行った。日本ラテンアメリカ学会中部日本研究部会では、「アメリカのヘゲモニー?:冷戦期アメリカのアカデミズムとチリ」と題し、アメリカのアカデミズムが、チリの政治・経済に与えた影響について、アメリカの経済学者A.ハーバーガーへのインタビュー資料を中心に検討した。 2018年7月25日から27日、FLACSO-ISA 共催の国際会議では、米州システムのセッションにおいて、”US-Latin American Relations, the Paradox of American Hegemony and Domestic Politics: Lessons from US-Chilean Relations in the Cold War Period and After”と題する研究発表を行った。発表では、冷戦期、ポスト冷戦期においてもアメリカは米州地域において覇権的な地位にあると思われるが、必ずしもラテンアメリカ諸国の国内政治経済状況に常に影響を与えていたわけではなく、またラテンアメリカ諸国においてアメリカの覇権的な地位に対する反発があり、パラドックスがみられることに言及した。 チリにおける軍政期の記憶形成という点からしても、アメリカの関与に関する記憶は、パブリック・アートなどで見られる事例もあるが、チリの国内政治についての記憶が中心である。尚、軍政期の記憶形成については、視察したアルゼンチンやチリの博物館、軍事博物館においても、当時リニューアル中であり、今後の展示などに注目したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、アルゼンチンとチリの事例を中心に、冷戦期ラテンアメリカ諸国における権威主義体制の誕生と軍部による人権侵害行為、民主化後における過去の人権侵害の記憶形成について、アルゼンチンとチリの事例を中心に博物館及び旧収容所関連施設視察を行い、2回の学会発表では、研究課題について、他の研究者からフィードバックを得るなどし、研究の進捗状況はおおむね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きラテンアメリカ諸国の事例を中心に、他のアジアやヨーロッパ諸国との比較やグローバルな趨勢を踏まえながら、移行期正義研究、国際関係論、平和研究などの先行研究を学際的に踏まえながら、過去の人権侵害の記憶の形成と記憶形成が時間の経過とともに次世代に伝えられるようになってきているのかを中心に考察していきたい。国内外での学会において研究発表することで、他の研究者からのフィードバックを受け、研究課題に取り組んでいきたい。
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