研究課題/領域番号 |
17K03606
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
廣野 美和 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (40757762)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際関係論 / 中国 / 平和構築 / 人道支援 / 紛争仲介 / 紛争解決 / 経済開発 / 開発援助 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度の活動として、まず研究の土台となる基本概念や中国政府の政策に関する資料収集を行い、「不介入主義」と「紛争仲介活動」に関しては分析・執筆・出版活動も行なった。
(1)「国際的責任」:紛争や自然災害地域における大国の「国際的責任」とは何か、その概念的な検討を行うために、中国のみならず米国にとっての「国際的責任」はどのように論じられてきたのかを検討するため、その先行研究を収集した。(2)「不介入主義」:国際的・歴史的にこの概念がどのように理解されてきたのかについて検討し、国際共同研究の形で査読論文として国際的学術誌(The China Quarterly)に提出し、修正の上、受理された。(3)「中国政府の政策」:特に国連平和維持活動とODA活動に注目して、2000年から公表されている政策文書を収集した。紛争仲介と人道支援については政策文書そのものはあまり存在しないため、関連の報道などを収集した。(4)「紛争仲介活動」:紛争仲介活動と不介入原則との関わりをどのように考えるべきか、理論構築を行なった。アフガニスタンにおける中国の紛争仲介を例として、理論的枠組を提示した論文を査読論文として国際的学術誌(The China Quarterly)に提出し、修正の上、受理された。
ミャンマーの事例研究において、様々な中国アクターの活動が、カチン州・シャン州における紛争にどのように関わっているか、またミャンマーの人々が中国にどのような認識を抱いているかについての分析を行なった。実際のフィールドリサーチは(学外研究制度を取得できたため)2018年4月~5月に行なった。またプロジェクトウェブページを開設し、収集した資料等のデータベースのプラットフォームを作成した(https://chinaandassistance.com/about/)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画を全て完了しただけでなく、以前から行われていた中国の不介入原則に関する国際共同研究において、本研究プロジェクトにおける分析結果を盛り込むことにより共同研究が成功し、中国研究の国際的な学術誌The China Quarterlyにおいて中国の不介入原則とその現実に関する特集ページを組むことにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、まずミャンマーで行なったインタビューのテープ起こしを行なった上で、それらと他の関連資料を分析し、中国の様々なアクターがカチン州・シャン州でどのような活動を行なっており、それは国際規範とどのような関係にあるのかというテーマでの査読論文を執筆する。
南スーダンに関する事例研究も始め、様々な中国アクターの活動が、南スーダンにおける紛争にどのように関わっているか、また南スーダンの人々が中国にどのような認識を抱いているかについての分析を行う予定である。南スーダンは依然として戦闘がいつ勃発するかわからず、ジュバ市は渡航中止勧告が発令されている。そのため、フィールドリサーチは、隣国であるエチオピアとケニアで南スーダンに関わる外交官、研究者、NGO等を中心に行い、南スーダンに住む現地の人々の中国観に関しては現地のリサーチアシスタントを雇って行う方針で計画を進めている。
中国政府の政策に関するアップデート、プロジェクトウェブページのアップデートも順次行う。また、平成30年度は学外研究期間となり8月から年度末までハーバード大学でフルブライト研究員となるため、上記に加えて中国の国際的責任に関する単著の執筆を進めながら、米国における研究者にも助言等を求めた上で、研究成果を国際学会で報告することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロジェクトの初年度である平成29年度に最初の事例研究としてミャンマーにおけるフィールドリサーチを予定していたが、平成30年度が、研究者にとっての学外研究期間となったため、ミャンマーにおけるフィールドリサーチは平成30年4月に行うことにしたから。
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