研究課題/領域番号 |
17K03608
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
三宅 康之 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50363908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外交史 / 国際関係史 / 冷戦史 / 同盟政治 / ミドルパワー / 1940年代 / 中国 / 中華民国 |
研究実績の概要 |
1949年に中華人民共和国の建国という国際秩序の一大変化が生じた際、米国は同盟・友好関係にあるミドルパワー諸国に中国不承認を要請したのに対し、英国は同時期の承認を誘った。では、米英との狭間にあって、欧米やアジアのミドルパワー諸国はどのような外交を展開したのか。これが本研究の中心的な問いである。研究代表者は、建国初期に中国と国交樹立した国々の国交樹立に至った外交過程を、マルチ・アーカイヴァルな調査に基づき実証的に解明する作業を進めてきた。本研究は、中国との国交樹立を模索しながら実現に至らなかった主要なミドルパワー諸国の中国承認外交の過程を探究するとともに、国交樹立に至った事例も併せて総合的に再検討することで、当時の対中外交ネットワークを立体的に捉え直し、国際政治システム構造の理解を深めることを目指している。 初年度であった平成29年度については、研究実施計画の通り、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの北欧三ヵ国の事例研究を進めた。すでに史料収集を済ませていたスウェーデン、ノルウェーの外交文書に、夏季休暇中にデンマークで収集した史料を加えることで、三国それぞれの外交政策過程と三国間の協議などが把握可能となった。また、英米との関係性を見るためにアメリカでの史料収集を秋季に前倒しして行ったことで、冬期休暇中に論文執筆を進め、初稿を完成させることができた。 また、本研究で取り上げる英連邦諸国に関連して、秋季には日本国際政治学会研究大会でインドの事例について報告し、インド政治専門家から貴重なコメントとともに高い評価も得ることができた。英連邦諸国と密接な関係にあるビルマの事例についても、中国の専門誌に投稿し、現在審査結果を待っているほか、これとは別に、投稿後新たに入手したビルマの外交文書に基づき、ビルマ外務省内の動向を詳細に跡づける論文を国内ジャーナル発表に向けて執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
北欧と中国の外交関係に関する研究はわが国では皆無である。とくにデンマークでの史料収集は事前申請など壁が高く、従来ほとんど試みられてこなかっただけに、北欧三ヵ国の史料を用いた研究は画期的であるとして過言ではない。言語上の問題から論文執筆には時間を要することが想定されたが、初稿を仕上げられたのは十分評価に値すると言えよう。 また、関連するインドやビルマのケースについて学会発表、中国最高の専門誌への論文投稿、新史料の入手および論文執筆などに加え、本研究の成果を活かした書評の執筆など予想以上の進展もあった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も対象各国の公文書館で調査および史料収集を行い、各国の事例研究および論文執筆を進める。平成30年度については、西欧のミドルパワー諸国(フランス、オランダ、ベルギー、イタリア)の事例について重点的に取り組む。春季にはフランスの公刊史料集所収の文書、オランダで収集済みの史料を読み込み、また夏季にはベルギーでの調査を行う。ベルギーについては事前申請が必要であるが、許可を取得済みである。イタリアについては外交文書の公開度に問題があることが判明したため、年度内は先行研究や関係者の回顧録の収集など基礎作業を優先する。当初の研究計画で予定していたイタリアでの史料調査に代えて、秋季に北米のミドルパワーであるカナダでの史料調査を行う。冬季には収集した史資料に基づき、論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた台湾の史料集の出版が遅れたため。出版され次第購入する。
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