研究課題/領域番号 |
17K03608
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
三宅 康之 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50363908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際関係史 / 外交史 / 冷戦史 / 同盟政治 / ミドルパワー / 中国 / 中華民国 / 国交樹立 |
研究実績の概要 |
1949年に中華人民共和国の建国という国際秩序の一大変化が生じた際、米国は同盟・友好関係にあるミドルパワー諸国に中国不承認を要請したのに対し、英国は同時期の承認を誘った。では、米英との狭間にあって、ミドルパワー諸国はどのような外交を展開したのか。これが本研究の中心的な問いである。本申請者は、建国初期に中国と国交樹立した国々の国交樹立に至った外交過程を、マルチ・アーカイヴァルな調査に基づき実証的に解明する作業を進めてきた。本研究は、中国との国交樹立を模索しながら実現に至らなかった主要なミドルパワー諸国の中国承認外交の過程を探究するとともに、国交樹立に至った事例も併せて総合的に再検討することで、当時の対中外交ネットワークを立体的に捉え直し、国際政治システム構造の理解を深めることを目指している。 第三年次であった令和元年(平成31年)度については昨年度来のベルギーでの史料収集に加え、フランスでの史料収集・文献収集を行った。このほか米国および台湾でも西欧諸国の事例に関連する史料収集を行った。 また、カナダの事例については昨年度に収集した資料に基づいて論文を執筆し、学部紀要にて発表した。英連邦と関連の深いビルマの事例についても論文を執筆し、国内学会誌に投稿した。審査と加筆修正を経て令和二年度内の掲載が決定した。 これらの研究の意義・重要性としては、第一に、わが国では先行研究が存在しなかった状態を改めることである。第二に、各国では先行研究が存在するもののすでに相当時間が経過していることから新たに公開された史料に基づき再検討の余地が存在したこと、さらに、当該国と中国との関係を取り上げるにすぎず、比較検討していない問題が存在した。本研究はこれらの問題点を克服するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ミドルパワー諸国として、北欧諸国、西欧諸国、英連邦(カナダ・オーストラリア)などを取り上げるものである。現時点で当初予定していた西欧諸国のうちのイタリアでの史料収集はハードルが高く断念せざるを得なくなったが、フランスおよびベルギーでの史料収集は実行できた。現時点ではイギリスとオーストラリアでの調査を残すのみとなっている。 また、論文執筆に関して、北欧諸国についてはスウェーデン、英連邦についてはカナダ(関連してビルマ)の事例研究を書き終え、カナダおよびビルマについては公表できた。ただし、史料が膨大にあり、またフランス語のため西欧諸国(フランス・ベルギー)についてはまだ史料の整理段階にあり、論文執筆に至っていない。 以上から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本来、令和2年度は本研究の最終年度であり、イギリスないしオーストラリアでの史料収集を予定していたが、コロナウイルス問題のため、史料調査・収集の計画が立てられない状況である。 また本研究課題申請時点では予期していなかった在外研究の機会を得て、4月から9月までの半年間、台湾で本研究課題とは別の研究課題を遂行中である。現時点では台湾においてもコロナウイルス問題のため本研究課題に関する史料収集も行えない状況下にあるうえ、出国も事実上不可能である。 したがって、このまま年度末に至るまで海外出張が不可能である場合は、研究期間延長の申請を行わざるを得ない。 いずれにせよ、当面はこれまでに収集済みの史料を読み込み、論文執筆を進めることに専念したい。
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