コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って1年延長した本研究は、最終年を迎えた。今年度は、前年度最後に積み残した平和維持活動(PKO)の犠牲者発生メカニズムの究明について計量分析の改善を中心に研究を行った。 前年度行った2度の学会・研究会における発表において、部隊提供国が多国籍で構成されるPKO部隊の部隊司令官を輩出している際に犠牲率が上昇する現象を報告したが、統計分析の手法が不十分であること、事例との連携があいまいであることなどが指摘されていた。統計分析の手法に関しては、共変量バランス傾向スコア(Covariates Balancing Propensity Score)によるマッチングをしていたが、元データがパネルデータであるため、どことマッチしているかが不明瞭で、結果的に反事実的因果推論に問題を生じるという指摘があった。今回、元のデータはそのまま維持しつつ、方法論の分野で新たに提示されているPanelMatchという手法で改めてマッチングを行った。これにより、部隊司令官の任命から1年後には要員提供国の犠牲率が下がるという現象が確認された。統計分析の結果が変わることになり、論文そのものを書き改めることになった。 書き改めた論文をオンラインで開催された日本政治学会で報告した。統計的頑健性の提示が不十分だったり、統計分析に合致する事例の提示が依然として不十分、という指摘を得たが、研究としては進展しているといえる。現在、論文出版に向けて修正を行っている途上にある。 本来国際学会に参加するための渡航費として予定していた研究費の執行について、学会がオンライン化することが多くなり、渡航費が不要となった。このため多くの予算を方法論に関する書籍の購入などに振り分けなおすことになった。
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