研究実績の概要 |
昨年度,学会誌に受理された拙稿(Kurose, K. 2022. A two-class economy from the multi-sectoral perspective: The controversy between Pasinetti and Meade-Hahn-Samuelson-Modigliani revisited, Evolutionary and Institutional Economics Review, 19, 239 - 270)は複数均衡が存在するモデルを提示したものの,全ての制約が満たされている定常成長経路だけに焦点を当てていた。 モデルにより現実的な意味を持たせるため,価格・数量の調整過程に関して上記のモデルと類似したほかの多部門モデルの成果と比較検討を行った。これらの分析は,双対安定定理(dual stability theorem)としてよく知られているが,価格の調整については,技術選択を許容したレオンチェフ生産モデルから得られる解を均衡価格として,任意の初期値から始まる価格の変化が,特定の調整過程にしたがってその均衡価格に収束するかに焦点が当てられてきた。数量の調整については,価格の調整が終了し,技術がそれ以上変化する余地のない定常成長経路に対して,任意の初期値から始まる成長経路が収束するのか分析された。 本研究では,そうした多部門成長モデルの構造および成果をサーベイし,こうしたモデルに基づいた分析では,失業や資本の遊休などの現実に非常に重要な現象に光を当てることが困難であることを示し,国際雑誌に投稿した。
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