研究課題/領域番号 |
17K03619
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
工藤 教孝 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80334598)
|
研究分担者 |
尾山 大輔 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (00436742)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | サーチ理論 / 企業規模 / 景気変動 / 価格分布 / 労働時間 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はサーチ理論に「企業規模」の概念を導入することである。伝統的な労働市場サーチモデルでは企業という単位を考慮しないあるいはできない構造になっているが、本研究では資本と労働を投入とするいわゆる新古典派型の生産技術を持つ企業からなる経済を分析した。このような設定は伝統的サーチ理論よりも分析難度が高い。なぜなら、労働者一人からなる企業と違い、1対1の交渉理論によって賃金を計算することができないからである。 企業1対多数の労働者という環境で賃金を分析する方法については研究代表者による以前の研究ですでに解明されているが、本研究ではさらにそのモデルを景気変動分析に応用し、日本経済に合わせてシミュレーション分析を行った結果、日本の労働市場の景気変動をかなりの精度で再現することに成功した。特に、景気変動上の雇用(extentive margin)と労働時間(intensive margin)の2つの雇用調整チャンネルの推移について、日本では後者の働きが強いことを実証的に確認し、それをモデルシミュレーションで再現した。この研究成果は国際学術誌のReview of Economic Dynamics誌に掲載された。また、これを発展させる形で「雇用」「失業」「非労働力」の3つの状態を人々が推移する景気変動モデルの開発に成功し、研究発表を行いながら分析の改善を進めた。 さらに、財市場において企業規模が価格分布に与える影響についても分析を進めた。その結果、企業規模の大きな企業ほど高い価格をつけるということが判明し、かなり一般的な数学的条件の下でその結果が支持されることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
労働市場サーチモデルに企業規模を導入して景気変動分析を行った研究成果が国際学術誌のReview of Economic Dynamics誌の査読審査を通り、掲載されたという大きな成果が得られた。さらに、その研究成果を土台とする複数の派生プロジェクトも順調に分析が進んでおり、研究発表を重ねながら執筆段階に進んでいる。これらの派生プロジェクトの中には研究計画立案時には着想していなかったものもあり、想定以上の進展であると自己評価している。 また、企業規模と価格分布に関する研究においても、論文が執筆の最終段階に入っており、国際学術専門誌への投稿に向けて順調に研究が進展していることに加え、執筆作業を進める間に、拡張性が高く非常に性能の高い新しい理論モデルの開発に成功したため、こちらについても当初計画していなかった派生プロジェクトが進み始めたので、計画以上の進展だと自己評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
労働市場の景気変動分析については、まずは派生プロジェクトの一つを学会発表のために応募中であるので、学会発表の準備と並行して専門誌への投稿に向けて作業を急ぐ計画である。次に、当初予定のプロジェクトである「雇用」「失業」「非労働力」の3つの状態を人々が推移する状況を捉える景気変動分析に戻る計画である。2018年度中に行った研究発表で得られたコメントなどを踏まえて理論モデルを修正し、分析結果を論文にまとめて国際学術誌に投稿する計画である。 企業規模と価格分布に関する研究は、国内外での研究発表を行いながら2019年度中の国際学術誌投稿を目指す。また、派生プロジェクトについても追加の分析を進めて論文執筆の準備を進める計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が0ではないものの、5万円未満であり十分に少額であるため誤差の範囲内だと認識しており、おおむね計画通りに予算を執行したと考えている。次年度使用額は翌年度分と合わせて研究発表や論文執筆・投稿などのために使用する計画である。
|