研究期間全体を通じて企業規模概念を含むサーチモデルの開発に力を注ぎ、研究成果のひとつ“Employment and Hours over the Business Cycle in a Model with Search Frictions”は共同論文として査読付き専門誌であるReview of Economic Dynamics誌に掲載された(以下RED論文と呼ぶ)。RED論文の実証分析において、日本の雇用調整に関する重要な事実を発見した。労働投入の変動を「雇用者数の変動」と「一人あたり労働時間の変動」に分解した結果、一人あたり労働時間の変動が労働投入の変動のうち79%を説明することが分かった。論文の理論分析において、この事実を再現する数理モデルを開発し、おおむね成功した。 RED論文を起点として、複数の新規プロジェクトが生まれた。そのひとつとして、RED論文の数理構造を簡略化した上で、労働供給における所得効果の数量的評価を行うモデル上の実験を行い、その結果を “Do General Equilibrium Effects Matter for Labor Market Dynamics?” という共同論文にまとめ、査読誌に投稿した。 また、規模の異なるn企業による価格競争を分析し、一般的にモデルの解が一意に存在することを証明した上で、規模の大きな企業により大きな価格支配力が発生する結果としての価格分散が起きることを証明した。この研究成果は “Market Structure and Price Dispersion: Asymmetric Oligopoly with Sequential Consumer Search” という共同論文にまとめ、現在査読誌への投稿に向けて準備を進めている。
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