研究実績の概要 |
本研究は、「曖昧性回避」という選好をとらえる効用関数“A Smooth Model of Decision Making under Ambiguity”(Klibanoff et al., Econometrica,(2005))に基づく資産価格理論を発展させることを目的とする。特に、実証研究で多用される「リスク回避」に基づく多因子モデルを「曖昧性回避」に基づく因子を含むモデルに拡張し、データとの整合性の検証を目指す。
令和4年度は、平成29年度に導出した曖昧性因子を含む多因子モデルを多期間モデルに拡張子し、得られた知見を投稿すべく準備を進めた。その際、昨年度までの研究を通じてデータを用いた曖昧性因子の特定方法に理論の示唆する構造から乖離する傾向があることが示唆されたことから、曖昧性因子の特定方法と推計方法についても再考した。
具体的には、データを用いた推計と整合性を持たせるために、研究代表者が行った2期間モデルに関する先行研究(科研C:26380235)において導出した曖昧性因子の特定方法をレジーム・スウィッチングモデルにもとづく多期間モデルに拡張した。一方で、モデルの有効性を示すためにはデータを用いた推計結果を提示する必要があり、その推計方法に関して、本モデルと整合的な手順を導出した。しかし、既存の統計的推計方法に同手順を当てはめた場合には各種係数の推計値が収束しないことが判明したため、それを迂回する方法を検討する必要が生じた。この点に関しては、大学本部理事補や附属図書館機構副機構長としての職務も加わった結果、研究時間の確保が困難になり、結果として、当初より目的としてた曖昧性因子の実証的特定は研究期間内に終了しなかった。
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