研究課題/領域番号 |
17K03625
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮原 泰之 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80335413)
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研究分担者 |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 教授 (20314461)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 繰り返しゲーム / 観測構造 / 自動観測 / 観測オプション / フォーク定理 / 私的観測 |
研究実績の概要 |
自動観測と非自動観測を伴う繰り返しゲームに関する理論的分析を行った。研究分担者と関連文献の輪読を行いながら研究を進めた。 完全観測の有限回繰り返しゲームにおいては段階ゲーム(繰り返しゲームの成分ゲーム)が一意の相関均衡をもつ場合には、それに対応する行動の繰り返しのみが部分ゲーム完全均衡となることが知られている。本研究が想定する自動観測と非自動観測を伴う有限回繰り返しゲームについて、段階ゲームが一意の相関均衡をもつ場合にも非自明な部分ゲーム完全均衡が存在することがあることを示した。 上の結果は次のような観測構造の下で得られたものである。各プレーヤーはある確率で自動的に相手プレーヤーが選択した行動が確実にわかり(自動観測)、残りの確率で相手が選択した行動に関する情報を全く得ない。この場合、プレーヤーは相手プレーヤーが選択した行動を観測するかしないかを決めることができる(非自動観測)。観測する場合は無費用で相手が選択した行動を確実に知ることができる。自動観測にせよ非自動観測にせよプレーヤーが得た情報は私的情報となる。よって、私的観測に分類される観測構造である。 上記の観測構造を拡張した分析も行った。自動観測にせよ非自動観測にせよプレーヤーが得る情報は相手プレーヤーが選択した行動に関する不完全はシグナルであると想定した。この分析は現在も継続中である。 完成した分析の一部を論文にまとめた。そして、2017年6月に香港中文大学で開催された2017 Asian Meeting of the Econometric Societyと立命館大学で開催された日本経済学会にて「Finitely Repeated Games with Automatic and Optional Monitoring」というタイトルで研究分担者である関口格が研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の出発点となる分析は完成している。学会で研究発表も行っており、関連分野の研究者からは概ね好意的な評価を得ている。よって順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
自動観測にせよ非自動観測にせよ各プレーヤーが相手プレーヤーが選択した行動が確実にわかる場合についての分析は完成したと言える。今後はその観測構造を拡張した不完全観測の場合について分析を行う。そして、観測精度が変化したときに均衡利得集合が単調に変化するのは観測精度がどのような性質をもつ場合かを明らかにする。そのために観測精度の定義から検討したい。最も標準的な観測精度の定義はブラックウェルの情報価値基準である。ブラックウェルの情報価値基準で観測精度を順序付けた場合、観測精度の変化によって均衡利得集合の単調性に変化するのかどうかも明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
講義の都合上、出席を考えていた国際学会に参加することができなかった。次年度に参加することを予定している。
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