研究課題/領域番号 |
17K03629
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
穂刈 享 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20344856)
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研究分担者 |
大石 尊之 明星大学, 経済学部, 准教授 (50439220)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 協力ゲーム / 双対ゲーム |
研究実績の概要 |
平成30年度は、経済学に登場するさまざまな配分ルールの公理的研究に、協力ゲーム理論の双対・反双対アプローチを応用する研究を進めた。この方向での研究は、平成29年度も部分的に取り組んでいたが、それをさらに発展させた。まず配分ルールの双対・反双対アプローチの基本的諸性質を明らかにした。これらの諸性質を使うと、配分ルールの公理化は、その自己(反)双対ルールの公理化で用いられている公理の(反)双対をとることで導出することができる。この例証として、飛行場ゲームのシャプレイ値の公理化で用いられている公理の双対をとることで、談合ゲームのシャプレイ値の新しい公理化を導くことができる。この公理化のなかに使用されている公理の1つは、飛行場ゲームのある整合性公理の双対公理であり、文献では知られていない。ほかの例証として、飛行場ゲームの仁の公理化で用いられている公理の反双対をとることで、談合ゲームの仁の新しい公理化を導くことができる。この公理化のなかに使用されている公理の1つは、飛行場ゲームの別の整合性公理の反双対公理であり、文献では知られていない。 上記の研究と並行して、協力ゲームの枠組みで、共同のプロジェクトへの参加者の集合が変化する状況を考え、参加者の集合が大きくなるほど各人が得をするような余剰の配分方法(population monotonic allocation scheme, PMAS)が存在する条件についても研究を進めた。プレイヤーの数が4以下の準凸ゲームにおいてはPMASが存在することは知られていたものの、その具体的な計算方法が知られていなかったので、任意の4人準凸ゲームのPMASを計算するためのアルゴリズムを作り、それがうまく機能することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、配分ルールの双対・反双対アプローチに関する研究について、海外の国際学会(the Association for Mathematics Applied to Social and Economic Sciences)で論文報告を行い、海外研究者たちと当該研究に関する情報交換および議論を行った (開催場所: Parthenope University, Napoli, 発表年月日: 2018年9月13日)。 この報告成果を活用して、研究成果を論文にまとめ、慶應義塾大学経済研究所のディスカッション・ペーパーとして公開した (Oishi, Keio-IES DP, 発表年月日: 2019年3月28日)。平成30年度の研究計画にあった、双対・反双対アプローチを経済問題の分配ルールの規範的分析に応用する研究は、上述の進捗状況から、おおむね順調に進展している。 準凸ゲームにおけるPMASについての研究は、中国で開催された国際学会で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の研究は、まず、 前年度までに取り組んできた配分ルールの規範的分析への双対・反双対アプローチの応用研究を完成させる。ディスカッション・ペーパーとしてまとめた研究成果を国内外の学会で報告し、問題を精査し, 必要に応じて分析手法等の修正を行う。具体的には、平成31年度において、国際学会である15th European Meeting on Game Theoryでの論文報告が確定済みである。また、当初の研究計画にあるように、ナッシュ・プログラムへの双対・反双対アプローチの応用についても分析していきたい。具体的には, 凸ゲームのクラスでコアを交渉ゲームの非協力均衡点として特徴付ける既存モデル、協力ゲームの双対・反双対アプローチが応用できるか調べる。また、投票ゲームの解である投票力指数に、双対・反双対アプローチを応用して、投票力指数の新しい応用を探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に開催予定であった国際研究集会が開催できなかったため、次年度に開催する予定である。
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