所与のTUゲームの「双対ゲーム」の標準的な定義においては、各提携が得られる総利得は、全体提携で得られる総利得からその提携の補集合で得られる総利得を引いたものとされている。任意のTUゲームをその双対ゲームに写す写像は、TUゲームの集合上の一次変換と見做すことができる。この一次変換は以下の性質を持っていることがよく知られている。(1) この一次変換を2回適用すると元のゲームに戻る。(2)この一次変換によってシャープレイ値は不変である。(2)の意味において、任意のTUゲームとその双対ゲームは、シャープレイ値の観点から見れば、同一の状況を描写する2つの異なる方法であると言える。本研究においては、TUゲームの集合上の一次変換で上の2つの性質および「無名性」(変換の仕方がプレイヤーの名前に依存しないという性質)を満たすものが双対ゲームの標準的な定義から得られる上記の一次変換以外に存在するのかどうか、存在するならばそのような一次変換を全て記述することはできるのかという問題を考察し、以下の結果を得た。 1. プレイヤーの3人の場合のTUゲームについては、上記の3つの条件を満たす全ての一次変換を求めることができた。プレイヤーが3人の場合には、TUゲームの集合上の一次変換で「無名性」を満たすものは全部で10個の変数を用いて表すことができる。上記の(1)の条件から、10本の式が得られ、(2)の条件から2本の式が得られるので、10個の変数に対して12本の式が与えられることになる。結果的に21個の場合分けを行うことにより、21個の行列を用いてこの連立方程式の解を全て記述することができた。 2. 3人ゲームについて求めた一次変換の中でn人のケースに一般化できるものを1つ見つけることができた。
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