研究課題/領域番号 |
17K03637
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
藤井 陽一朗 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (80635376)
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研究分担者 |
竹村 和久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10212028)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多属性効用関数 / 交差微分 / 医療経済学 / 遅延価値割引 / 自由意志 / 双曲線型割引 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、意思決定の結果が多次元の要素によってあらわされるときの表現の構築ならびに、実験による妥当性の検証をおこなうことを目的としている。経済学の分析で合理的な選択基準となっている期待効用理論においては、意思決定の結果が貨幣の1属性のみで測られることが多く、より一般的なモデルの構築がもとめられている。 当該年度の研究成果としては、大きく理論パートと実験パートに分けることができる。まず理論パートとして、多属性効用関数の医療経済学分野への応用が挙げられる。医療経済学は意思決定の結果を複数の属性で記述することにより、多くの知見を生み出している分野である。Fujii and Osaki (2019, Journal of Health Economics, Accepted)では、意思決定の結果を富の水準と健康状態という2つの属性で表現することにより、個人が複数の疾病に同時罹患する状況を緩和するための支払意思額の変化を考察している。他属性の効用関数における、富と健康水準の属性ごとの交差微分の方向により、個人がより多くの支払意思額を表明することを明らかにしている。 また、実験パートとして意思決定における自由意志の程度と意思決定の遅延価値割引の関係を検討するための実験的検討をおこなった。遅延価値割引モデルとしては、双曲線型割引モデルと指数関数型割引モデルの様々な計量モデルを用意して、自由意志を操作した実験課題を用いたが、自由意志の要因と意思決定の遅延価値割引モデルについての明確な差異が見出されなかったことが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論パートにおいて、他属性効用関数における交差微分の符号により個人の意思決定が説明できることを明らかにした点が順調に進捗していると判断した理由である。この研究結果をまとめた論文が、医療経済学分野のトップジャーナルに受理されている点も評価される。 あわせて実験パートにおいても個人の選好を測定することに着手できている点が評価できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は他属性効用関数を実験手法を用いて計測することが重要になる。また、これらの結果について早めに取りまとめることで国際学会ならびに国際ジャーナルに投稿していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の謝金を計上していたが、パイロット実験のみを実施していて本実験による謝金が支出できていないため。
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