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2017 年度 実施状況報告書

人口構造変化と持続的経済成長

研究課題

研究課題/領域番号 17K03638
研究機関関西学院大学

研究代表者

田畑 顕  関西学院大学, 経済学部, 教授 (20362634)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード高等教育 / 研究開発投資 / 経済成長
研究実績の概要

政策当局者の多くは、人口減少・知識創造社会において、より多くの人々に高等教育へのアクセスを促し、高等教育人口を量的に拡大し、研究開発の基盤を形成することが、その経済の持続的な経済成長にとって重要だと考えている。実際にOECDの平均では、低授業料の国公立大学、奨学金などを通じ、高等教育費の70%程度が公的な財源により賄われている。しかし一方で、経済成長の実証研究の多くは高等教育の量的拡大と経済成長率の間に明確な関係が見られないという結果を導いており、政策当局者の認識と実証研究結果には差異が生じている。
本研究ではこうした問題意識に基づいて、プロダクト・イノベーション(製品開発イノベーション)とプロセス・イノベーション(生産過程イノベーション)の両方を考慮した2期間世代重複、R&D型経済成長モデルを構築し、高等教育を受けた熟練労働者の量的拡大をもたらすような高等教育補助政策が経済成長率に及ぼす影響について理論的な分析を行った。その結果(1)市場構造(企業数)が調整過程にある短期では、高等教育補助政策が経済成長率に及ぼす影響はパラメータの値次第で、正、負どちらの場合もあり得ること、(2) 市場構造(企業数)が完全に調整される長期では、高等教育補助政策は企業数を増やすものの、企業あたり市場規模の縮小を通じ、経済成長率を低下させること、を明らかにした。こうした経済成長に関する理論的含意は高等教育の量的拡大と経済成長率の間に明確な関係が見られないという実証研究と部分的に整合的である。これらの理論的成果は "Higher Education Subsidy Policy and R&D-based Growth" (School of Economics, Kwansei Gakuin University, Discussion Paper Series)としてまとめられた。。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では、(1). 人口の高齢化が企業の技術選択や個人の起業選択を通じ、長期的な経済成長率に及ぼす影響を分析する経済成長モデルを構築すること、(2). (1)の理論研究に基づく実証研究、数値計算のために必要なデータベースおよびシミュレーションプログラムを作成すること、の2つを本年度中達成すべき課題として挙げていた
こうした研究計画に基づき、プロダクト・イノベーション(製品開発イノベーション)とプロセス・イノベーション(生産過程イノベーション)の両方を考慮した2期間世代重複、R&D型経済成長モデルのベースモデルを構築し、人口の高齢化が長期的な経済成長率に及ぼす影響についての分析を試みた。しかし構築した理論モデルの解析的な取り扱いが難しいこともあり、長寿化や少子化の効果について、興味深くかつ明確な理論的含意を導くことはできなかった。しかし一方で、高等教育補助政策に関しては、興味深くかつ明確な理論的な含意を導くことができたので、高等教育補助政策に関する論文としてまとめることとした。また高等教育補助政策に関しては数値シミュレーション分析も行い、いくつかの興味深い結果を導くことができた。しかし、構築した理論モデルの抽象度が高く、実証研究に必要な適切な代理指標を見つけることが難かった。そのため実証分析に関しては最低限必要なデータベースの作成は行ったものの、興味深い結果を得るには至らなかった。
以上高等教育補助政策に関しては、既存研究では分析されていない、興味深い理論的含意を導くことに成功した。その点についてはある程度自分でも評価できると考えている。しかし当初計画した人口の高齢化が企業の技術選択を通じ経済成長に及ぼす影響を分析する理論モデルの構築には成功したとはいえず、さらなる検討の余地が残る。その意味では、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。

今後の研究の推進方策

今年度は高等教育補助政策に関して、一定の興味深い理論的結論を導くことには成功した。しかし当初の計画では人口の高齢化と経済成長の関係について考察する理論モデルの構築を目指しており、次年度も今年度に引き続き、まずは人口の高齢化が企業の技術選択を通じ、長期的な経済成長率に及ぼす影響について分析する経済成長モデルの構築を目指す。その際、今年度構築した理論モデルから得られた知見が有用だと考えている。
そしてその構築された経済成長モデルを拡張する形で、当初計画において2年目の課題として取り上げていた、(1).高齢者の労働力参加率の向上が、社会保障制度の維持可能性や経済成長率に与える影響について分析する理論モデルの構築、(2). (1)の理論研究に基づき、1人当たりの年金給付額と経済成長率の関係についての分析、といった作業にも取り組んでいく予定である。
こうした応用分析においては、解析的なアプローチでは限界があり、主に数値計算の手法に頼ることとなる。そのためシミュレーションプログラムの作成に多くの時間を割く予定である。またこうした理論分析に基づく実証研究のために必要なデータベースの作成などにも取り組む予定である。
以上、次年度についてもできうる範囲で、当初の研究計画に沿って研究を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
研究全体の進行が遅れ、論文執筆作業が進まなかったため、研究報告のための旅費や英文校正費の支出予定分の一部を次年度に繰り越すこととなった。
(使用計画)
翌年度に持ち越すことになった45,623円については旅費や英文校正費などに割り当てる。また翌年度分として請求した直接経費700,000円分については当初の計画に沿って、文房具や統計分析ソフトウエアなどの物品費に300,000円分を、研究報告のための国内旅費や学会参加のための外国旅費などの旅費に300,000円分を、研究補助の人件費・謝金に50,000円分を、英語チェックの査読料などのその他の項目に50,000円分をそれぞれ割り当てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] Higher Education Subsidy Policy and R&D-based Growth2018

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Morimoto, Ken Tabata
    • 雑誌名

      Discussion Paper Series 178, School of Economics, Kwansei Gakuin University

      巻: 178 ページ: 1-42

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公開日: 2018-12-17  

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