研究実績の概要 |
本研究の目的は、ローザンヌ大学ワルラス文庫の調査を手掛かりに、ワルラス一般均衡理論の起源とその意義を明らかにすることにある。平成30年度の研究の柱は、前年度に実施したワルラス文庫の調査結果の検討とそれに基づく研究論文の執筆・発表であった。 6月には、ヨーロッパ経済思想史学会(ESHET)マドリッド大会で、ワルラスの企業者兼労働者概念の形成過程に関する論文 "Leon Walras on the Worker-Entrepreneur”を報告した。また、ワルラス文庫調査の結果明らかになったジェヴォンズの著作へのワルラスの書き込みの検討を「研究ノート ローザンヌ大学ワルラス文庫所蔵 ジェヴォンズ『経済学の理論』三つの版(1871, 1879, 1909)をめぐって」として大学紀要に発表した(12月)。また同月、フランスの国際査読ジャーナルOeconomia誌に、ワルラスの労働市場観に関する論文“The Concept of Labor Market in Leon Walras’ Pure, Social and Applied Economics” が掲載された。この論文は2016年から取り組んできたものであるが、査読過程で行った修正において、本科研費の研究成果を大きく反映することができた。1月には、アメリカ経済学会(AEA)アトランタ大会(ASSA 2019 Atlanta)のワルラスに関するセッション”Pure Mind, Applied Vision, and Social Conscience: Revisiting the Economics of Leon Walras”で、討論者を務め、関連テーマについて貴重な討論をすることができた。また前年度に国際査読ジャーナルに投稿した論文について、査読者の指示に従って修正を加え、3月に再投稿した。
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