本研究は、ローザンヌ大学ワルラス文庫の調査を手掛かりに、一般均衡理論の思想的起源を明らかにした。(1)ワルラスがスミスから得た影響、(2)フランス18世紀思想とワルラス経済学の関係、(3)ワルラスのイギリス古典派批判の3つの観点から研究を進めたが、特に(1)について、明確な結論を示すことができた。ワルラスは『国富論』から影響を受けているのは事実であるが、意外なことに「見えざる手」の一般均衡理論(純粋経済学)への影響は皆無であり、むしろ分業理論の影響を受けている。それは応用経済学における効率性の議論においてであり、社会経済学における分業の起源については影響を受けていない点も興味深い。
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