研究課題/領域番号 |
17K03645
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
原 伸子 法政大学, 経済学部, 教授 (00136417)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 女性労働 / 家族 / 母性思想 / 子ども |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、両大戦間期イギリスにおける女性労働者組織に集結した女性労働者を対象として、公(市場における労働)と私(家族)の関連についてどのような思想を展開したのかを明らかにすることである。それは同時に、現代においても普遍的に貫いている、「ウルストン・クラフトのジレンマ」(キャロル・ぺイトマン)である。福祉国家の黎明期である戦間期における女性のシチズンシップの意識・運動の高まりは、母性思想と複雑に絡み合っている。それは、同時期における同一労働同一賃金論をめぐる論争や、家族手当構想において明確な形で表れている。 今年度の研究業績は以下のとおりである。 ①本年度に予定していたイギリスにおける文献調査は、平成30年度に延期することにしたが、7月15日に開催された、法政大学大原社会問題研究所主催の国際シンポジウム「子どもの貧困を問う」において、Mary Daly氏、Aya Ezawa氏とともに、本研究の内容に関する研究打ち合わせを行った。このシンポジウムの報告は、『大原社会問題研究所雑誌』第711号(2018)に掲載されている。 ②社会政策学会、第134回大会2017年6月3日~4日、明星大学)では共通論題『福祉の市場化を問う』の報告者として、「福祉国家の変容とケアの市場化」を報告した。そこでは、イギリスにおける「第三の道」の市場化による保育政策と、公私のジレンマのもと労働市場のマージナルな状況に位置づけられるシングルマザーの実態を明らかにした。 ③翻訳準備。Jaen Humphries,Child Labour and Childhood in the British Industrial Revolution,の翻訳作業を共同でおこなっている。本書は、資本主義成立期イギリスにおける児童労働を通して、家族における子どもと母親との関係を描き出すものである。法政大学出版局より刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、海外における研究者との意見交換および文献調査を行えなかった。けれどもそれに代わるものとして、7月に開催された、法政大学大原社会問題研究所主催「子どもの貧困を問う」における海外研究者の招聘にさいして、本研究による後援をおこなった。そこで、ヨーロッパにおける研究動向や今後の展望について有意義な意見交換をおこなうことができた また、社会政策学会全国大会で、保育労働や家庭におけるケア労働の理論的・実証的意味を報告できたことは、研究の理論的前提を明確にする重要な機会であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下のとおりである。 ①2018年6月19日~21日に開催される、国際フェミニスト経済学会(New York State University, New Paltz)にて、Child poverty and Gender Equality in Japanの報告を行う。そこで、報告のみならず、海外の研究者との意見交換をおこなう。 ②研究の進捗状況にあわせて、2018年8月下旬、あるいは2019年2月に、イギリスとドイツの研究調査を計画している。イギリスでは文献調査、ドイツでは、現在急速に進められている家族政策についての聞き取り調査をおこなう。 ③研究成果を英語論文にして海外に発信する。投稿先としては、Feminist Economics, あるいは、Cambridge Journala of Economicsを考えている。 ④翻訳書の完成。現在進めている、Jane Humphries, Child labour and Childhood in the British Industrial Revolution,を年度末までに脱稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度イギリスにおける研究調査を行う予定であったが、2017年7月15日開催の国際シンポジウムにおける、海外研究者招聘を後援して資金援助することに変更した。実際に、イギリスやオランダでインタビューする予定であった研究者にお会いして、研究テーマや今後の研究計画について話し合うことができた。そのため、海外調査を2018年度に延期した。そこで差額が生じている。
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