研究実績の概要 |
2018年度の研究成果は以下のとおりである。いずれも本研究課題「両大戦間期イギリス女性労働者組織の思想と福祉国家の起源」に関わる理論・歴史・政策研究の一環である。 ①福祉の契約主義の研究-1980年代以降の福祉政策(および理論)への市場化の進展を「福祉の契約主義」化と性格づけて、それが福祉国家の性格を以下に変容させたかについて研究した。その成果は(単著)「イギリスにおける福祉改革と家族ー『困難を抱えた家族プログラム(Troubled Families Programme)』」『大原社会問題研究所雑誌』No.716(2018年6月号)として公刊した。 ②日本における保育の市場化と女性の自立との関係の研究ー2000年代以降の日本における保育の市場化がジェンダー平等に結びついていないという問題意識のもとでケア労働の意味を探るものである。本研究の成果は、(単独報告)“Childcare Policy, Child Poverty and Single Mothers: A Critical Assessment of Gender Eqiality in Japan”(第27回フェミニスト国際経済学会、6月19-21日, 2018, State Univeristy of New York, New Paltz, US)で発表した。 ③産業革命期における女性・子ども・家族の研究-本研究の一環として、Jane Humphries, Childhood and Child Labour in the British Industrial Rebolustion(Cambridge University Press, 2010, 法政大学出版局より2020年に翻訳書刊行予定)の翻訳作業をほぼ終了した。2019年3月9日~17日にはオックスフォード大学にて著者と意見交換をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の研究計画にそって進めていく予定である。以下は、2017年度、2018年度におこなった研究を総括するものでもある。 ①ケア労働についての理論・歴史・政策をまとめる―女性労働者の自立は労働市場と家族生活におけるジェンダー平等にもとづいている。労働市場における男女賃金格差については歴史的には戦間期イギリスにおいて、ラズボーンやウェッブらによる論争にすべての理論的中心的論点が提示されていると思われる。それは家族手当構想との関連で議論されるのだが、家庭におけるケアと労働市場における男女賃金格差の関係である。私は、この観点にもとづいて、正統派経済学において依然としてブラック・ボックスである家族、そこでのケア労働(育児・介護など)を分析できる枠組みを、フェミニスト経済学によって明らかにしたい。この研究「ケア労働論ー理論と政策(仮)」は2019年10月締め切りの『立教経済学研究』第73巻第3号(執筆確定済み)に寄稿する(単著)。ここでは、2017年度におこなったラスボーンに関する研究の成果を組み込む予定である。 ②翻訳、Jane Humphries, Childhood and Child labour in the British Industrial Revolution の脱稿(2019年9月)と、それをもとにした、単著「産業革命期における男性稼ぎ主家族の成立(仮)」を2020年3月5日締め切りの大原社会問題研究所雑誌(執筆確定済み)に寄稿する予定である。 ③第28回フェミニスト国際経済学会(Glasgow Caledonian University,2019年6月26、27、28日)にて、日本の保育の現状について報告予定である(単独報告)。
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