研究課題/領域番号 |
17K03647
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中井 大介 近畿大学, 経済学部, 教授 (70454634)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パターナリズム / 尊厳 / 自由主義 / 経済思想 / 功利主義 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、本研究のテーマであるパターナリズムに関する概念史の出発点として、18世紀から19世紀における経済学関連の主要な一次資料を広く参照し、paternalism(干渉主義)やpaternal government(干渉的政府)などの単語やフレーズの歴史的用法の調査を進展させた。 さらにパターナリズムの性質を見極めるうえで重要なキーワードとして浮かび上がった、dignityないしhuman dignity(尊厳ないし人間の尊厳)についても、同様に広く一次文献等を用いた調査を進展させた。 以上に関連する研究成果として、国際学会History of Economics Society(北米経済学史学会)の年次大会(Annual Conference 2017、カナダ、トロント大学)に出席し、「Economics, Utilitarianism and Human Dignity: A Historical Perspective」(経済学、功利主義および人間の尊厳:歴史的視野から)というタイトルで研究報告を実施した。その他各種研究会等においても、当該テーマに関連する研究報告を実施した。 上記の報告ペーパーを、得られたコメントなどをもとに、観光に向けてブラッシュアップを進めるなどした。またその他関連する論文の執筆も完了させており、出版事情にもよるが、これについては概ね2018年度中には刊行される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な経済学者たちの「paternalism」「paternal government」「dignity」「human dignity」などの用法およびその位置づけについては、おおむね調査が完了した。またその成果を、上記の国際学会で発表するなどした。同学会での報告ペーパーをブラッシュアップしており、近日中に国際ジャーナルに投稿する予定である。 また以上のように、パターナリズムを見極めるうえでは、さらにその背後にある価値観としてディグニティに着目する必要性にも気づかされることになった。したがって、ディグニティについても、同様に概念史的アプローチを用いながら、主要一次文献の調査を完了させることができた。 このような研究の進捗からして、おおむね計画通りに進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、報告者の本務校である近畿大学において、2017年度末にデータベースThe Making of the Modern Worldが導入された。したがって2018年度は、同データベースを活用し、さらに広い範囲で18-19世紀におけるパターナリズムやディグニティの用法を調査することが可能となった。 また本研究の出発点にする思想家ジェレミー・ベンサムについての研究を2018年度を本格的に進めて行き、論文投稿・刊行を進めて行きたい。 もう一つは、上記データベースにとどまらず、さらに広く一般的な用法を確認して概念史研究としての制度を高めるために、日程的に可能な場合には大英図書館やケンブリッジ大学図書館等での資料調査を実施することも検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記は支出額0となっているが、2017年度の支出に関する学内期限の関係上のためであり、実際には2017年度に文献購入や研究会出席のための出張旅費等の支出を行っている。また2018年度に渡英して資料調査を行う必要性が生じたため、予定していたよりも支出額を抑制して執行した。
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