研究実績の概要 |
本年度は基本的な文献のサーベイを引き続き行った。第一に金融化論の政策論及び金融化の進展プロセスのサーベイを行い、金融化論の枠組におけるネオ・リベラリズム政策の位置付けを検討し、特に金融化を促進させた政策について分析を行った。第二にマクロ経済レジーム論のサーベイを行い、金融主導型レジームにおける政策の役割の特徴と問題点について検討した。ここでは金融主導型レジームの不安定性と政策の関係を中心に考察した。第三に認知資本主義論においては、フーコーの生政治論やネグリのマルチチュード論に基づいて、労働や金融についての分析を行っている。ここではネオ・リベラリズム的政策を生政治論から検討し、金融化との関係を考察した。第四にネオ・リベラリズム論の理論的構成と政策の位置付けを検討し、政策の持つ意味を分析した。また、政策の思想的背景に関してもサーベイを行い、実際の政策との関係を考察した。第五にネオ・リベラリズム政策の実態とその影響に関する簡単な実証分析を行うために準備として、先進国のマクロ経済データの整理を行った。成果としては第一に書評ではあるが「J. Halevi, G. C. Harcourt, P. Kriesler, and J. W. Nevile, Post-Keynesian Essays from Down Under: Theory and Policy in an Historical Context (4 vols., 2016) をめぐって」(『経済学史研究』第60巻第1号、2018年7月)においてネオ・リベラリズム政策に触れている点には検討を加えた。第二に「貨幣の名目性:表券主義の貨幣理論」(『季刊経済理論』第55巻第4号、2019年1月)においてはネオ・リベラリズムに反対する政策としても位置付け可能なModern Money Theoryについて検討した。
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