研究課題/領域番号 |
17K03654
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中村 信弘 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (90323899)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 確率ボラティリティモデル / 分散リスクプレミアム / リターン予測可能性 / 自己・相互励起過程 / バリアンス・スワップ |
研究実績の概要 |
高頻度データから計算される実現分散(RV)とオプションから計算されるモデルフリーインプライドボラティリティ(MFIV)であるVIXの2乗の差として定義される分散リスクプレミアム(VRP)と、それを用いた原資産の将来の累積リターンの予測可能性に関する研究を行った。従来の理論ではRVを用いたVRPの定義式が用いられてきたが、本研究では、まず、離散時間の確率ボラティリティ(SV)モデルを用いて、RVを用いないVRPの定義式を考案し、株式指数の他、為替、債券、原油等の様々な代表的資産クラスに対して、累積リターンの予測可能性の実証研究を行い、有効性を確認した。高頻度データが入手不可能な資産クラスに対しては、本研究の成果は有益と考えられる。RVを使う従来の手法では、VIXが1か月満期の量であるため、RVの1か月予測による調整が必要であったが、その必要性がないという点で優れた方法であると考えられる。次に、リスク中立確率のものでの変動率であるVIXのモデル化に関して、連続時間の確率ボラティリティ(SV)モデルを援用したバリアンス・スワップの研究を行った。 本モデルの大きな特徴は、確率的に変動するリターンのリスクプレミアムと分散のリスクプレミアムを包含したSVモデルになっている点である。推定には、ハミルトニアン・モンテカルロ法を用いたベイズ推定を行い、推定可能であることを実証した。 更に、2次拡散過程に相互励起型のジャンプを加えたより一般的なSVモデルに拡張して、VIXの評価式を導出することに成功した。この式に基づき、VRPを計算したところ、将来の累積リターンに対して予測力をもつ説明変数であることをMonte-Carloシミュレーションで確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき高頻度データの整備を進め、予定していた研究を遂行し、研究成果を3つの論文にまとめることができた。それらの研究成果は学会で発表した。研究に必要な高頻度データは東証から日本株のすべての上場株式のデータをH30年3月まで購入し、また、CBOEに上場しているVIXや為替、原油、金等のコモディティの高頻度データも、研究に必要な期間分を購入し、予定していたデータ整備ができた。現在、順調に分析に着手し始めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度後半で購入した高頻度データを使った研究を始めており、これらを用いた新たなモデル(自己励起型ジャンプを持つ確率ボラティリティモデルで、VIXやRVに適合した構造をもつ時系列モデル、または、確率微分方程式)の推定を行い、リターンの予測可能性、そして、フォワード・ルッキングな投資戦略の可能性を研究する予定である。 データは通常の株式だけでなく、コモディティ、為替データであるためそれらの間で、バリアンス・リスクプレミアムのスピル・オーバー効果があるかどうかなども研究する予定である。 また、H29年度に学会発表した研究成果を、学術誌に投稿する準備をすすめることも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した物品が生産中止となり、平成29年度内に調達できなかった。代替品の発注を平成30年度に実施することで対処する。
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