研究実績の概要 |
粟屋・谷崎(2019)では,消費者庁「物価モニター調査」の個票データを用いて,個人の属性のようなミクロの要因と日本の経済環境のようなマクロの要因の双方が,消費者が行う将来の物価上昇率の予想に与える影響を統計的に分析した。観測された実際のデータからは,(1) 消費者の一年後のインフレ予想は実際の消費者物価指数前年同月比より高く見積もる傾向があること,(2) 若年層,無職または主婦・主夫層,2人以上世帯,低所得者などの消費者が高いインフレを予想することを統計的に明らかにした。また,マクロ変数については,消費者物価指数前年同月比が大きくなれば,マネタリーベース前年同月比が大きくなれば,円ドル外国為替レートが大きくなれば(すなわち,円安になれば),消費者は一年後のインフレ率を高く予想するという結果となった。 Ma and H. Tanizaki (2019a,b,c)の一連の研究では,Stochastic Volatilityモデルを用いて,株価市場やビットコイン市場の価格変動要因を考察した。株価市場において,株価の変動要因として非対称効果,休日効果,曜日効果などが含まれることが示された。さらに,通常は正規分布が用いられるがより裾野の広いt分布を用いる方がより良い結果が得られた。また,ビットコイン市場においても,株価市場と同様に,Volatilityの変動要因として非対称効果,休日効果,曜日効果などが観測されることが分かった。 以上のように,2019年度は個票データを用いて物価の変動要因の分析と株価市場・ビットコイン市場におけるVolatilityの変動要因の分析を行った。
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