研究課題/領域番号 |
17K03658
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆広 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (60320272)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インド / ミクロデータ / 人口 / 労働 / 不平等 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績で特記しておきたいことは、インドの家計調査であるNational Sample Surveyの2002年度と2012年度の2時点の農家調査個票データを利用した研究をディスカッションペーパーとして公表したことである(「インド農家における経済活動の多様化:インド「全国標本調査」(National Sample Survey)の個票データを利用して」)。この農家調査は、インド政府がはじめて実施した農家に関する「代表性のある」標本調査である。わたしが行った分析から、インド農家が置かれている厳しい経済状況や所得源泉の漸進的な多様化が明らかにされた。このディスカッションペーパーでは、インド全国農業農村開発銀行(NABARD)が実施した2015年度の報告書も利用して、2002年度から2015年度までのマクロでみた長期的な農家経済活動の変化も分析している。 また、インド全国農村雇用保障法のラジャスタン州での現地調査を記述した小論を執筆し、同法の実態の一端を明らかにした(「インド農村における貧困対策事業の実態について」)。とくに、この小論では、村落末端行政における同法の施行上の諸課題を議論することができた。 さらに、National Sample Surveyの個票データを用いて、1983年以降から2011年までのインドの就業状況に関するデータを整理し、今後の研究の土台となるような基礎的な統計整理を行った。 加えて、インドの航空機産業の従業員の属性を明らかにした論文も公刊することができた(「インド政府統計からみたインドの航空産業に関する研究ノート」)。 2018年度に執筆した貿易自由化と男女賃金格差に関するManabu Furuta, Prabir Bhattacharya and Takahiro Sato〝Effects of Trade Liberalization on the Gender Wage Gap: Evidences from Panel Data of the Indian Manufacturing Sector"論文を改訂し、定評ある海外学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
National Sample Suveryというインドを代表する個票データを利用して、長期的なインド労働市場変化を分析する、というのが本研究の重要な課題である。その点で、これまで利用してきた雇用失業調査だけではなく、2018年度は農家調査を分析できたことは、本研究にとっては重要な意義を持つものである。現在のインドの就業構造変化は、農家という形態を残しながら農家の世帯員の教育水準が高まり、非農業雇用に従事するというかたちで進んでいると考えられる。これはいわば、「農家内脱農化」現象と言って良い。そのため、農家内部の世帯員の就業変化と農家の経済活動の変化を同時に記述できる可能性が開かれた。 また、インド労働市場の長期変化を観察できるデータ作成も一定程度進捗している。 以上から、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は本研究の最終年度にあたる。1983年以降のインド労働市場の長期統計を完成させ、それに関する論文を執筆することを第1の課題にしたい。 第1の課題にめどが立てば、わたしがこれまで執筆してきたインド労働市場分析に関する論文を再整理し、必要であれば加筆修正や再計算などをして、インド労働市場に関するモノグラフの執筆を開始することを第2の課題にしたい。
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