研究課題/領域番号 |
17K03663
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪 友良 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (90463819)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 貨幣需要関数 / 共和分関係 / 構造変化 |
研究実績の概要 |
アメリカと日本の貨幣需要関数がどのような定式化をしているかを検証した。先行研究では、定式化としてlog-log型、もしくはsemi-log型があり、どちらが正しいかが十分に分かっていないといえる。両定式化の違いは、とくに金利がゼロに近いとき明らかとなる。log-log型では、金利がゼロに近づくと、貨幣需要は発散することになる一方、semi-log型では、金利がゼロになっても、貨幣需要は発散せず、何らかの飽和点を持つ。したがって、両定式化のどちらかが正しいかを判断するには、金利がゼロに近い期間を含むデータを分析する必要がある。 そこで我々は、アメリカだけではなく、日本の四半期データを検証することで、どちらの定式化が正しいかを明らかにしている。これらの国は、近年、預金金利がゼロ近傍で推移しており、貨幣需要関数の定式化を識別するうえで重要なデータとなっている。分析の結果、我々はsemi-log型ではなく、むしろlog-log型が正しいことを確認している。日本の貨幣需要関数については、log-log型でみると、1997年と2006年にそれぞれ構造変化があるだけでなく、これらの構造変化を考慮することで共和分関係が成立することが明らかとなった。1997年は多くの金融機関が破綻した年にあたり、2006年は量的緩和が終了した年となる。これに対し、semi-log型では、構造変化を考慮しても共和分関係を見出すことができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貨幣需要関数の非線形構造について主要な結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
構造変化を考慮した共和分検定としてGregory and Hansen (1996)検定がある。しかし、これは構造変化が1回までしか考慮されていない。Hatemi-J (2008)では、構造変化を2回までに拡張しているが、定数項と係数が同時に変化する場合のみ扱っている。我々は、この検定を複数の構造変化に拡張する予定である。そして、Kejriwal and Perron (2010)を用いて構造変化の数を特定し、その結果に依存して、我々の検定をすることで、複数の構造変化を考慮した共和分検定が可能となる。この結果を別論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、理論的な研究の成果をまとめることに力点をおいていたため、出張費がかからなかったことが主な原因である。未使用額については、次年度の海外出張に充てる予定である。
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