本研究計画では、家計内の意思決定に焦点をあて、様々な経済環境における家計内の意思決定のメカニズムを3つの視点から分析を行った。 まず第1の研究は、家計内のバーゲニングパワーが経済成長率と女性の労働参加に与える研究である。この研究では、合理的選考をもつ個人を家計内分配率(バーゲニングパワー)によってウエイト付けし、子供への教育資本投資、家計内公共材供給、そして女性の労働参加率の決定を理論的に明らかにした。家計内分配率は社会的慣習、夫婦間の人的資本(所得)比率によって決定されるとする時、(1)女性の労働参加率と女性のバーゲニングパワーには正の相関、(2)経済成長率と女性のバーゲニングパワーは逆U字の関係を持つことを明らかにすることができた。第2の研究は、所得格差があるときの公共財供給供給タイミングを分析した。まず、所得格差が著しく大きい場合は公共財の供給タイミングは無差別であるが、所得格差が小さくなれば、低所得者は高所得者よりも先に公共財を供給しようとすることを理論的に明らかにした。そして、理論結果を実験を用いて検証した。その結果、実験から得られた結果は理論結果をサポートするものであることを明らかにすることができた。第3の研究では、高齢化社会における税率の決定が所得分布がある中でどのように決定されるかを分析した。その結果、所得格差が大きい場合は高齢化は税率を上昇させる要因となることを明らかにすることができた。
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