研究課題/領域番号 |
17K03674
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大橋 弘 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00361577)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バンドリング / 競争促進的効果 / 競争制限的効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、バンドリングが市場競争にもたらす影響を理論的・定量的に評価することを目的にする。バンドリングとは、異なる複数の財・サービスを一括して販売することを指す。バンドリングは、原則的には競争促進的と考えられるものの、態様によっては一商品のみを販売する事業者の参入や事業拡大が阻害されるなど、競争制限的な効果に繋がる得ることが理論的に知られている。平成29年度は、バンドリングに関わる市場構造や政策上の課題について分析を行った。バンドリングという現象は、デジタルな世界において、より鮮明に見られている。例えば、デジタル・プラットフォームと呼ばれるグーグルや楽天といった事業者においては、それら事業者が提供するプラットフォーム上のサービスは、多くの場合、バンドル化されている。こうしたデジタルプラットフォームにおける競争制限的な観点から、デジタル・カルテルについての議論を、欧米の事例を交えて整理をした。同様に、2017年は我が国の競争法が成立してから70年目を迎えることから、戦後の競争政策の評価と課題に関して議論をした。個別産業で見ると、2016年4月の電力小売自由化を契機として、我が国における電力・ガス、通信といったサービスを対象とするバンドリングと割引が急増していることが知られる。電力の再エネの観点からWPを取りまとめると共に、不動産流通や医療機器、航空産業といった個別産業における経営戦略と市場に対する影響について、それぞれ定量的な観点も加味して取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンドリングに関連して、(1)市場競争に対する影響をnormativeとpositiveとの双方の観点から取りまとめると共に、デジタル・プラットフォームの観点における含意の分析も一定程度行うことができた点、(2)個別産業における市場競争への影響についても、定量的な分析も取り入れながら分析ができた点において、平成29年度に目標としていた個別産業のモデル化と定量的な分析に向けての研究実施に関して、一定程度の達成をみることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度である平成30年度においては、個別産業における定量的な分析を仕上げることを目的にしている。平成29年度に引き続いて電力産業に焦点を当てて、分析の更なる深堀を2つの方向性から行うことになる。ひとつは理論的な観点であり、家計行動に行動経済学的な視点を盛り込むことである。動学的な枠組みの中に、行動経済学的な仮説を盛り込むことで、電力に関する家計の選択行動に対する合理性に対して、一定の幅を持たせたモデルの検討を行う。二つ目は、定量的な観点である。家計の電力消費データに関して、通常の文献で用いられてきたレベルよりもかなり細かい、時間帯別・用途別のデータが入手できる見込みであることから、このデータを用いて、新たな家計行動の切り口を見出し、バンドリングに関する知見を深めることを目的にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力および解析に伴う人件費等を効率化することができ、また作業の一部を平成30年度に行うことが効率的と判断したことから、当初の平成29年度の予算額を下回ることとなった。
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