| 研究課題/領域番号 |
17K03675
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| 研究機関 | 東京工業大学 |
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研究代表者 |
島根 哲哉 東京工業大学, 工学院, 助教 (90286154)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 参入・退出ゲーム / カーシェアリング / 構造推定 |
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| 研究実績の概要 |
カーシェアリングは，「保有」ではなく「使用」にのみ焦点を当て，少ない固定的負担で日常用途の自動車利用を実現している．近年，自家用車の維持費用が高額となる大都市圏を中心に普及が進んでいるが，今後は社会的なインフラとして，より広く普及することが求められるサービスといえる．広範な普及を進めるためには，カーシェアリング事業者の参入の判断や，これに他の事業者との競争があたえる影響を実証的に理解することは重要である．このとき代替的な政策をシミュレーションで評価するためには，各地区の事業環境と参入判断の結果を誘導系で分析することにとどまらず，意思決定に至る利得の構造を明示的に定式化して構造推定を行うことが重要である．本計画ではカーシェアリングのサービス展開を参入・退出ゲームとして定式化し，これを構造推定した．
分析対象であるカーシェアリング事業の状況を表すカーシェリングステーションの設置状況やそれぞれの地点での事業への参入を判断に影響する要因についてのデータは，Web上に公開されている情報を収集して用いた．時点間の比較のために情報の収集は定期的に繰り返し行い，これを整理して記録する．本年度は，これらの手順を自動的に実行する環境の構築を行った．さらに，収集した対象期間のデータを地域メッシュごとに集計して，GIS利用可能な形式に改め，国勢調査や商業統計とマッチングを行い，空間データ分析が可能なデータセットを構成する手順を確立した．
モデルの構築については，Bajari et al.(2013)を参考に，各地区へのカーシェアリングサービス事業者の参入退出を判断するための利得を定式化した．大阪府を中心とした地区を対象に実証的にモデルを推定し分析した．結果を「カーシェアリングステーション立地の計量分析」としてまとめ，応用地域学会研究発表大会などで報告した．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの構築については，本年度はデータの継続的な収集によって(A)カーシェアリング市場(B)隣接市場についてデータを収集し，これを(C)社会経済データとマッチングしてGIS上で扱えるように整備することを目指したが概ね目標は達成したと言える．特にデータの収集については自動化を進めることができ，空間的に集計して分析可能な形式まで変形する手順についても定型化することで生産性を高めることができた．
モデル構築については，当初計画ではJia(2008)などを参考にnested fixed point procedureを用いた定式化を計画した．しかし，データベースを構築する上で収集対象とすべき有力な変量を早期に明らかにするために，推定の実行が比較的容易なBajari et al.(2013)らのアプローチを用いて定式化を行った．さらに，これに基づいて収集したデータを用いた構造推定を進め，大阪を中心とした地区について分析した結果，競争が進み他社の参入の恐れが増すと当該地区への参入がためらわれることや，当該地区でのそれまでの事業活動の実績が参入判断に影響を与えていることが明らかになった．
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| 今後の研究の推進方策 |
データベースの構築に関する今後の推進方策は，以下の通り．(1)本年度明らかになった課題として過去のデータの購入については手配できなかったため研究開始以前に遡った分析ができなくなったこと，収集すべきデータの種類・期間・地域が実際に分析をした結果から事後的に明らかになり，繰り返し見直しをしたため欠測が発生した部分があること，の２点が挙げられる．いずれについても，今後データの収集・整理・蓄積を確実に継続することにより，分析可能な期間の拡張することで課題の解決を図る．(2)さらにデータの収集状況の確認に現状では多くの時間を要しているため，収集状況確認やトラブルへの対応の自動化を進めたい．(3)蓄積したデータについては，時点間で比較が容易にできる形のデータに変換する手順を実装する．
モデル構築と実証分析に関する今後の推進方針は，以下の通り．(1)本年度採用した手続きでは，均衡が単一であることを仮定している．複数均衡が実現する可能性を踏まえてnested fixed point procedureによる分析に取り組み，本年度の分析結果と比較を行う．(2)本年度は明示的な空間的外部性は，一部のみ取り込んで定式化した．そこで本年度のモデルを拡張して他地域での参入状況がもたらす影響を空間的自己相関としてモデルに加え分析を行う．(3)データの蓄積が進み地域メッシュごとに繰り返し観測値が得られることで，パネルデータとして利用が可能になることを受けて，動学的な意思決定モデルを定式化して，実証分析する枠組みを検討する．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
過去のデータを購入することを計画していたが，手配することができなかった．今後データを継続的に収集することで，時点間比較可能なデータセットの構築を目指すこととした．当該助成金の新たな使用計画としては，（１）GISで利用できる社会経済データの購入，（２）推定に要する計算負荷が増すことが予想されるため，計算環境の改善，（３）GISによる分析閣下の出力環境の改善，に当てることとする．
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