グローバル化について理解する上で重要性が高まっている多国籍企業内における企業内貿易、特に統計上の制約から実態の把握が必ずしも十分でないにもかかわらず比重が高まっていると考えられるサービス貿易も含めた企業内貿易に関し、企業ミクロデータを用いた計量実証研究を進めた。 まず、独立行政法人経済産業研究所で実施された日本企業に対する独自アンケート調査のミクロデータに適正な手続きを踏んでアクセスし、財と区分されたサービス、特に技術も区分した企業内貿易の記述統計的分析を行った。また、このアンケート調査結果を政府統計(企業活動基本調査)の企業ミクロデータとリンケージさせた分析も試みた。その結果、親会社と海外子会社の間で企業内貿易が行われている組み合わせはごく一部に限られることが米国に関する先行研究と同様に確認された。海外子会社間の企業内貿易は更に限られること、技術の企業内貿易は親会社から海外子会社への輸出に専ら限定されることなどが見出された。 また、企業内貿易に関する情報を含む政府統計(海外事業活動基本調査)の企業ミクロデータを用いて、企業内貿易の決定要因の計量実証分析を行った。その結果、進出国の特性(発展途上国であるか)や産業特性(親子会社が投入産出関係にある産業か)などが影響することがわかった。 最終年度においては、サービス貿易を含む企業内貿易の決定要因について、企業特性に着目した計量実証研究を日本企業のミクロデータを用いて分析の精緻化を続けた。2019年度末にDiscussion Paperとして研究成果を公開しつつ広くコメントを集めて、論文の改定を進め、国際学術専門誌に投稿を行った。研究期間終了後における掲載に向けて、査読結果をふまえた論文の練り上げを今後も続けていく。企業内貿易に関連したテーマ(貿易政策など)についても計量実証研究を続けた。
|