研究課題/領域番号 |
17K03684
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
樹神 昌弘 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (20450512)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 産業構造変化 / 産業連関表 |
研究実績の概要 |
本研究は実証研究であるため、データの収集が必要となる。農業―非農業間の産業構造変化は、経済発展の初期段階に発生する。本研究プロジェクトではこの発展段階のデータを必要とするが、発展初期段階の経済データが十分に整備されている国は少ない。これに対して、東アジア・東南アジア諸国においては、発展初期段階のデータが比較的よく整備されている。具体的には、韓国、台湾、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアの産業連関表を入手した。 さらに、産業連関表データの電子化を行った。特に1990年以前のデータについては、紙ベースの産業連関表しか存在しない場合が多かった。一方で、本研究でのデータとしては、電子ファイル化されたデータが必要になる。そこで、紙ベースの産業連関表を手入力により電子化するという作業を行った。産業連関表は、一年分の表の中に数千個のデータが含まれている。このため、複数国、複数年のデータについての電子化には相応の時間を要した。 これらの作業の結果、上述のアジア6か国の産業連関表について、公表されている表は全て入手し、それらを全て電子化した。特に韓国、台湾については、1960年代の産業連関表を含むデータベースを構築した。1960年代においては、これらの2か国は発展の初期段階にあり、所得は低所得、あるいは中所得の中でも一番低い水準にあった。この水準まで所得が低い経済発展段階から高所得の経済発展段階まで、電子ファイル化された産業連関表を一貫して利用できるケースは希少である。そうした希少なデータを含んでいるという点において、本データベース構築の意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度については、産業連関表研究で利用されている付加価値誘発の方法により、国内需要、外国需要(輸出)と、それらが誘発した国内の非農業付加価値額を計算する。次に、国内需要によって誘発された非農業付加価値額が、国内で生産された非農業付加価値額全体に占める割合を計算する。同様に、輸出によって誘発された非農業付加価値額が、国内で生産された非農業付加価値額全体に占める割合を計算する。これにより、国内非農業付加価値生産の拡大を牽引してきたのは、国内需要であったのか、外国需要であったのかを数量的に明らかにする。 また、国内需要の中でも、国内消費として利用された付加価値についての分析を行う。所得が拡大にするにつれて、非農業生産部門に由来する付加価値についての国内消費額は、国内消費された付加価値の全体額と比較して、より増加率が高いのかの確認も行う。すなわち(財ではなく)付加価値で見たエンゲル効果が発生しているかの確認を行う。 以上の計算作業を行うことにより、国内需要、輸出と、国内非農業付加価値生産の関係についての関係を明らかにする。 平成31年度については、研究結果を論文としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力のための補助員経費を予定していた。しかし、予定していた補助員が事情により補助をすることが不可能な状況となった。また、臨時の補助員を見つけることも困難であったため、研究員自身が入力を行った。これらの要因により、残額が生じた。
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