2022年度は本研究課題について、「デジタル金融包摂」という金融包摂の中でも新しい分野に注目し、デジタル金融包摂と国際送金の貧困削減に対する関係性について分析を行った。 金融包摂は、すべての人々が所得、資産、性別、居住地域に関わらず、フォーマルな金融仲介機関が提供する基本的な金融サービスにアクセスし、利用できるようになることと定義される。この金融包摂の進展度を計測するために、これまでは商業銀行の支店や現金自動預け払い機の数、銀行口座の数、そして預金・貸付額などのデータが用いられてきた。しかし、サブサハラアフリカを始めとする一部の途上国地域では、金融インフラの整備が進んでいないことから、人々はモバイルフォンを活用して基本的な金融サービスにアクセスし、これを利用する傾向にある。こうした新たな現象を踏まえ、デジタルデバイスを通じた金融包摂であるデジタル金融包摂に対して近年注目が高まっている。 デジタル金融包摂の進展度を計測する統計データは国際機関を中心に公表されているが、実証分析を行うために必要なサンプルは十分蓄積されていない。このため、本研究ではモバイルフォン保有割合をデジタル金融包摂の進展を示す代理変数として用い、モバイル金融包摂の進展と国際送金の増加がどのような関係性を持って途上国の貧困状況に対して影響を及ぼし得るのかについて実証分析を行った。 この研究成果は、2023年2月にタイ・バンコクで開催された国際学会にて報告した。コメントを受けて加筆修正した論文は、現在、学術誌に投稿している。
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